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zoom RSS 霊界探索之三

<<   作成日時 : 2008/08/16 20:38   >>

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「あーあ。ゆううつだなあ、嫌だなーっ」

私は、川原を歩きながら頭の後ろで手を組んで、空を見上げる。
霊界の空は、ちっとも寒くないのに雪でも降りそうな厚い雲が垂れ込めてた。

「何がゆううつなんですか?」

先導して飛んでたカラスが、律義に私のところに羽ばたいて来た。
私の前を歩いてたジャンパースカートの女の子が、立ち止まってこっちの様子をうかがってる。

「だってさあ、閻魔様の所に行くってことは、あれでしょ、天国か地獄に振り分けられるんでしょ」

……って、私が言ったら。

「天国じゃありません極楽浄土ですっ!」

即座にカラスが突っ込み入れて来た。

……あ、そうか。
キリスト教だっけ、天国って言ってるの。
どうもここって仏教的「あの世」って感じだし、極楽浄土って言わないといけないのかも。

「その、極楽浄土と地獄のどっちに行かされるのかって思うとさ、こう……不安じゃない」

この心境、自信のないテストの答案用紙が返ってくる前の状況に近い。
もっとも、テストなら補習っていう救済措置があるんだけどさ。

「ええっ、そんなに悪事ばっかり働いてたんですか!?」

「ちがーうっ!」

君は私をどう見てるんだね、カラス君!
……でもなあ、善人とは絶対言えないよなあ、私。

「そりゃ、完璧な善人じゃあないけどさ。お祭りの屋台ですくってきた金魚を二日で死なせちゃったこともあるし、他人をボロクソにけなしたこともあるし、おつかいのお釣りごまかしたことあるし、兄ちゃんのプラモわざと壊したことあるしぃ……」

……ダメだあ!
地獄行きになる要素しか浮かばなーい!

「大丈夫。よっぽどのことがない限り、一番厳しい処分を下されずに済むと思いますよ」

ちょっと絶望しかかってると、カラスがなぐさめてきた。

「え、本当?」

たった一言で、思わず明るい声が出ちゃうぐらい回復する私って、現金な女?

「だって、少なくとも人間の分を越えたことはしてないんでしょう?」

「人間の分?」

何それ。
空飛ぶなとか遺伝子改造するなとかそういうこと?

「神や仏を騙ったり、その使いを騙ったりすることですよ。人間の分をわきまえない、最悪の行為と見なされているんです」

……最近話題になってた占い師が、まさしくそんな感じだったような……。

「もし騙ったりしたら、地獄行きになるの?」

興味がわいたので聞いてみると、カラスの雰囲気が変わった……ような気がした。

「ええ。地獄の中の、さらに深くて恐ろしい場所に閉じ込められます。出ても良いというお達しが出るまで」

そう言うカラスの横顔、どこか緊張してるみたいだし。

「どこよ、それ」

「奈落の底に落とされるんです」

落とされる……。

カラスの翼を動かす音が、やけに大きく聞こえた。

「真っ暗で、一人きりで、何も聞こえなくて、暑いとか寒いとかも感じられなくて……そんな所です。今まで、耐えられたものは誰もいません。出ても良いと言われるころには、皆……」

それが、さっき言ってた「一番厳しい処分」ってことか。

「……発狂しちゃうんだね」

「もし本当に清らかな存在であるなら、耐えられるそうですけどね」

……そういう存在って、やっぱ、人間とは根本的に違うものなんだな。
私は、妙に納得した。

「だけど、変なんですよねえ」

カラスの体から、少し緊張が解けた。
口調も、ちょっと柔らかくなってる。

「こちらから遣わした数と、あっちで実際に名乗ってる数が違うんですよ。名乗ってる方の数が不自然に多いんです」

「人間って恐れを知らない生き物なのね……」

私は、ふと、女の子が不安そうにこっちを見ているのに気付いた。

「あ、ゴメンね。もう話終わったから」

笑顔を向けたら、サッと顔を背けられてしまった。

うーん……仲良くなるにはまだまだ時間がかかりそう……。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
霊界を舞台にした冒険小説のようで楽しいです。
前回は主人公を別キャラと間違えてすみません(^^; でも遺伝子改造って(笑)彼女はやっぱり強烈なセンスなんですね。
カラスのキャラ、こじゃれた感じで好きです。
ia.
2008/08/17 00:31
感想ありがとうございます。

いえ、気にしないで下さい。
誰かに読んでもらうと、自分の作品でも新しい発見があって楽しいですね。

んで、主人公ですが。
一話では神秘的な人をイメージしてたはずが、二話を書き終える頃には、死んだっていうのに泣きわめくでもなくのほほんとしている豪胆(?)な人になってました。

でもカラスは最終回まで今のままで貫きたいデス。

よろしければ、またおいで下さいませ。

鈴藤 由愛
2008/08/17 09:22
由愛さん、筆が乗ってますね。
読んでいてもスラスラいきますもん。

>奈落の底
そうなんですってね。スピリチュアル関係で読んだような気がする。
五感を使えないことが、人間にとって一番の恐怖なのかもしれない。
つる
2008/08/17 22:30
感想ありがとうございます。

お盆休みで時間がたっぷりあって、一日一話というスピードで書けました。
あう……今日からまた仕事だいっ(涙)

スピリチュアルの本は読んだことないですが、ストレスを完全になくしたらどうなるか、ということで五感を制限した実験の話はかじったことあります。
感覚って大事ですね、うん。

よろしければ、またおいで下さいませ。

鈴藤 由愛
2008/08/18 06:50
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