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zoom RSS 霊界探索之十七

<<   作成日時 : 2008/08/31 21:52   >>

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――霊界に戻って来た私達は、それぞれの日常に戻った。

カラスは、三途の川の淵で、渡ってくる死者を閻魔様の御殿へと導く仕事に。
閻魔様は、死者を極楽行きと地獄行きとに振り分ける仕事に。

そして、私は……。

私は、御殿の池の淵でひざを抱えて、れんげの花をぼーっと見ていた。

あー……。

考えたって楽しくないんだから、考えないようにしてるんだけど……。

はあ……。
いよいよ、地獄行きかあ。

一人でどんよりしてると、スタスタと誰かが近寄ってくる気配を感じた。
顔を向けると、御殿の方から歩いて来た閻魔様が、私の隣にスッと座り込んだ。

……なんとな〜く距離が近いような気がして、私はもぞもぞ離れた。

「こんな所で何やってるんだ」

「カラスと待ち合わせ中。送ってくれるってさ」

そう。
カラスが、今日の仕事が始まる前に地獄の門まで送るって言ってくれたのだ。

本当は専門の係がいるらしいんだけど、全然知らない奴よりは、知ってる奴の方がいくらか気も楽だから、甘えることにしたのだ。

「そうか」

閻魔様はそれっきり、何も言おうとしなかった。

……何かしゃべれ、こら。
落ち着かないでしょうが。

「……お前」

「ん」

「極楽に行きたくはないか」

閻魔様が、大真面目な顔で私を見た。

「行かせてくれるの?」

びっくり顔で見つめ返す私。

そりゃ、地獄なんかより極楽の方が良いに決まってるけど……一旦決めた事なのに、いきなり変えたりして良いもんなの?

「今回の功績があるからな。説明すれば、裁定をやり直させてもらえると思う」

「……いい」

私は、首を横に振った。

「何故だ?」

閻魔様が、驚いた顔してる。

「いや……特別扱いはいかんでしょ」

それに、私のためにやり直させるのも心苦しいし。

「そうか」

閻魔様が、私から視線を外して、れんげの花を見つめる。

「……すまなかった」

うお!?
何故そこで謝罪の言葉がっ?

「誤解していた。お前は、善行を成して、極楽に行かせてもらおうとしたのではないのだな」

「……そう思ってた?」

「ああ」

閻魔様が頭をかく。

まー、無理ないわね。
生きてる間、何の接点もなかった人を助けようとするんだもの。
下心あり、って思わない方が変だわ。

「……では何故、あの小娘に肩入れした? 危険な目にあってまで救おうとした?」

「う、うーん……」

真剣な顔で見つめられて、私は、顔をしかめた。

実はその辺り、昔の経験ってものがちょっと関係してるんだよねえ。
私としては、重い話だし、あんまり話したいことじゃないんだよなあ。
むやみに同情されたりするのってうっとうしいし……。

うう……でも、こうやって考えてる間も、閻魔様がじーっと見てる……。

生きてるうちは、雰囲気を重くしたくないから黙ってたけど……でも、もう人間関係に悩むこともないだろうから、話しても良いかな……?

「……私ね、妹いたんだわ」

「妹?」

私の言葉に、閻魔様が意外だと言わんばかりの顔をする。

……あの巻物には、そういうこと、書かれてなかったんだろうか。

「そうよ。マユっていう名前で、私が九歳の時に生まれたの」

私は、自然とうつむいていた。

「でね……マユって、生まれつき病弱だったんだ。未熟児で生まれて来て、保育器からなかなか出られなかったし。夜中に熱を出すこともしょっちゅうで、全然外で遊べなくて。パジャマ姿じゃない日の方が珍しいくらいで……」

……閻魔様、保育器とかパジャマとか、そういうのって何なのかわかるかな?
でも私、それを気遣ってわかりやすいように置き換えて話す余裕、ない。
言葉がどんどんあふれてくるから。

「でね……ある日、学校から帰ったら、家の前に救急車がいてね……マユ、病院の集中治療室に運ばれて……そのまま、死んじゃった。インフルエンザのウィルスのせいで脳炎にかかったんだって、後で聞いたんだけどね。死んじゃった時、ちょうど、ナツメちゃんぐらいだった」

――今でも、覚えてる。

妹の入った棺の小ささを。
命を失った人間の頬の白さを。

「その……不憫だったなあ、って思ってさ。友達も出来なくて、将来の夢もまだ決まってなくて、遊園地とか海とか、そういう楽しい場所も知らないまま、苦しい思いして人生終わっちゃって……」

……まずい。
鼻の奥がツ―ンとしてきた。

「……やり切れないな」

閻魔様が、ため息をついた。

うわ、駄目だ。
やっぱ雰囲気重くなった。

「いや、だからさ、私、あのぐらいの年の女の子に弱いんだよねえ」

私は、雰囲気を軽くしようと、タハハと笑って手をひらひらさせた。

「……なるほど」

いや、しんみりしないでってば。
に、苦手だ、こういう空気。

「お待たせしましたー!」

そこへ、物凄く慌てた感じの羽音がした。

――カラスだ。

空気を変えたかった私としては、ナイスタイミング!

「うん、待った待った」

私は、わざと年寄りじみた仕草で、よっこいしょ、と立ち上がった。

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
そうか、そんなわけがあったのか。
だからナツメちゃんのこと放っておけなかったんですね。
それにしても極楽行きを断るなんて、
なんてもったいないことを……
でもこの潔さ見習たいわぁ。

話は変わりますが。
勝手にリンクしちゃいましたが
迷惑でしたら外しますので言ってください。
毎日来るのにリンクしてあった方が便利なのでって理由で貼ったんですけどね(^^;

2008/09/01 00:33
しんみりしちゃった。それもこれも、それまでのミチルの明るい描写が、このエピソードを活かしているわ。
閻魔様の気持ちが動くのかしら。
つる
2008/09/01 00:42
舞様>ただかわいそうと思っただけの行動力じゃないですよね、あれ。
あ、リンク貼って下さったんですか。
迷惑だなんてそんな、むしろ大喜びですわ!
後ほどこっちでも貼らせてもらいますね。

つる様>実は最初、妹じゃなくてお母さんを持ってくる予定でした。
だけどそれで小さい子のために必死になるかなあと思って急遽変更。

閻魔様……どうすんだろ。うーん。



取りあえず、次回あたりで最終回です。
鈴藤 由愛
2008/09/01 09:01
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