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zoom RSS 霊界探索之十五

<<   作成日時 : 2008/08/29 23:46   >>

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ぎいやおぁああああっ!

おぞましい叫びに、私はハッとした。

あ、そうだ。
閻魔様とカラス、戦ってるんだった。

目を向けると、塊の下半身が液体に変わっていて、短くなった腕を振り回していた。

「たあっ」

ザシッ!

あ、腕が切り落とされて……。

私は、慌ててナツメちゃんの目を手で覆った。
こういうの、子供に見せちゃマズイわよね。

「これで――終わりだっ!」

閻魔様が、塊に刀を深々と突き刺す。
塊が、一瞬だけぎくりと動きを止めた後、しゅうう……と煙のように消えた。

閻魔様が、身を屈めてひざに手を置いて、はーっと息を吐き出す。

「お疲れ」

「……おう」

私と閻魔様は、ニッと笑いあう。

――さて、いよいよ本題だ。

「ナツメちゃん……もう一回、お母さんとお話してみよ?」

こくり。

ナツメちゃんが、うなずいて立ち上がった。


――ナツメちゃんのお母さんは、それからしばらくして目を覚ました。


「ナツメ?」

目を覚ますとすぐ、ナツメちゃんに気付いた。
……さっきの事があったせいか、警戒してる。

「あ、あのっ」

「無駄ですよ、ミチルさん」

説明しようとしたら、カラスに止められた。

「あの母親、元々霊感のある人間ではないからな。娘以外の霊など感じることはできんだろう」

「……見てるしかないんだね」

もどかしいな、それ。

私は、頭をかいた。

「おかあさん」

ナツメちゃんが、おずおずと細い腕を伸ばすと、ナツメちゃんのお母さんが、ちょっと身をすくめた。

お願い、拒絶しないで!

私は、指を組んでその光景を見つめていた。

「おかあさん、ぎゅっ、てして」

ナツメちゃんは、お母さんに会って、抱きしめてもらいたかったんだ。

私は、涙が出そうになった。

ナツメちゃんは、他の浮かばれない魂に自分を取られそうになりながらも、お母さんにひどいことをしないで、って懸命に逆らっていた。

決して楽なことじゃなかったのに。
怖かっただろうに。

それでも守ろうとするほど――お母さんのことが、大好きだったんだ。

「うん……うん」

ナツメちゃんのお母さんは、目をうるませた。

「ごめんね、あんな事して……痛い思いばっかりさせて、つらい思いばっかりさせて……!」

そして、ぎゅっと抱きしめた。

さっきはすり抜けていたけれど、今は違う。
その腕で、ナツメちゃんをしっかりと抱きしめている。

「おかあさん」

その腕の中で、ナツメちゃんの姿が、みるみる透き通っていく。

――最後の、本当に最後の瞬間、私は、ナツメちゃんが安らかな表情を浮かべたのを、かすかに見た。

「消滅しましたね」

「うん」

私は、ナツメちゃんがいた場所をじっと見つめた。

さよなら、ナツメちゃん。
次に生まれてくることがあったら……今度は、幸せな暖かい家庭に生まれて来れますように。

「……親父の言うことにも一理あったか」

その時、閻魔様がぼそりと言った。

「ん?」

親父って?

「何でもないっ、細かいことをいちいち気にするなっ」

むすっとした顔つきになった閻魔様が、くるっと背を向ける。


全てが終わった、その場所で。

――ざざあ、と夜風に木の葉が揺れた。

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