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zoom RSS 霊界探索之十三

<<   作成日時 : 2008/08/27 23:17   >>

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「おい、カラス」

閻魔様が呼ぶと、

「はい、ただ今」

カラスがひょんっと飛び出して来た。
私の見間違いじゃないのなら、閻魔様の影の中から。

「い、今、あんたの影から……」

「こいつは夜目がきかないからな。しまっておいた」

私の質問に、何でもないことのように答える閻魔様。

しまっておいた、ってアナタ、ドラえもんみたいなことを……。

「ご用件は何でしょうか?」

「塊と小娘を切り離す。お前の技で足止めしろ」

言いつつ、閻魔様が腰の帯にくくっていた刀を抜く。

「ええーっ! そんな、無茶ですよ、閻魔様ぁ!」

カラスの声、ほとんど悲鳴に近い。

「取り込まれてからさほど時間も経っていない。やるなら早いうちが良い」

「わ、わかりましたよぉ……」

本音としては、不本意っていうか納得してないんだろうな。
カラス、うなだれてるもの。

何となく、気持ちはわかるぞ。
上司の決定には逆らえないもんだよね……うん。

密かにカラスに同情してると、閻魔さまが私の方を向いた。

「俺が塊を切って、小娘のいる辺りに穴を開ける。お前はそこから小娘を引っ張り出せ」

「え、ええっ!?」

それこそ無茶じゃない!
私はなーんの力もない、ただの人間……もとい、幽霊なのよ!

というのが、思いっきり顔に出てたみたいで。

閻魔さまは、ガリガリ頭をかきながらこう言った。

「お前以外に頼める奴はいない」

「う、うーん……」

「やらないのか?」

「……そうじゃないけど」

「じゃあ『はい』と言え」

じ、自信がないんですけど……と言いかけた時、

「ひっ、ひいっ、ひいいいいいっ」

ナツメちゃんのお母さんが、痛々しい悲鳴を上げた。

ツメちゃんのお母さんは、塊の足元にいた。
見開いた目から涙をぼたぼた流すばかりで、呼吸も不規則だし、今にも失神しそうだ。

……どうにかしなきゃ。

きっと、ナツメちゃんはその……他の怨念とかそういうのに操られて、本当の気持ちを言えてないんだ。
お母さんに会って言いたいことやしたいことが、他にあるんだ。

私、そう信じる。

だからもう一度、ナツメちゃんとお母さんを会わせたい。
親子がすれ違ったままで終わるなんて、そんな悲しいこと、ないもの。

このまま終わりになんて、させたくない!

「……わかった、やるわ」

私は、表情を引きしめた。

こうなったら、何でもやってやろうじゃないの。

元々、死んでる身の上なんだし。
それに、もう地獄行きも決定済みだし。

――お、そう考えたら何だか気が楽になってきた。

「……でも、カラスって夜目きかないんじゃなかった?」

「あれだけでかい思念の塊なら、視力に頼らんでも位置がわかるぞ」

私が指摘すると、閻魔様は塊を睨んだまま答えた。

そ、そういうモンなの?
よくわかんないけど。

「――行くぞ!」

閻魔様の声を合図に、カラスがバサバサと舞い上がり、塊の前に到達する。

一方の閻魔様は、刀をかまえた姿勢のまま、何かを探るように目を閉じていた。

「はぁっ!」

ヒュンヒュン、と翼で風を切る音がする。
ぎゃおおおおっ、と塊が醜い叫び声を上げた。
見ると、カラスの羽根が、何枚も黒い塊に突き刺さってた。
もがくような動きを見せていた塊は、だんだん動きがにぶくなって、そのうち石のようになってしまった。

それを見たナツメちゃんのお母さんは、急にがくっと崩れ落ちた。

……失神したみたい。

その時、閻魔様が、カッと目を見開いた。

「そこかっ!」

素早く塊の右下の辺りをスパッと切り裂く。
その裂け目から、ナツメちゃんの上半身が現れた。

「ナツメちゃん!」

私の呼びかけに、反応はない。
ナツメちゃんはぐったりして目を閉じたまま、ピクリともしなかった。

私は、無我夢中で駆け寄って、ナツメちゃんの両腕を引っ張る。

――なかなか抜けない。

「うーんっ!」

必死に引っ張っていると、ずる、と少しだけ動いた。
引っ張るたびに、にゅるり、と周りの肉(?)がうごめくのが、ちょっと気持ち悪い。

「早く!」

閻魔様の声が焦ってる。

「抜けないの!」

手伝って! と言おうとした時、鈍い痛みがお腹を襲った。
鈍い痛みが、だんだん熱を持ってじくじくと全身に広がっていく。

――何……?

お腹に目をやると、塊の一部分が槍のような形に変形していて、それが私のお腹を貫通していた。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ええっ!一難去ってまた一難だ。ミチルと同じ場所が痛いです。
今回は臨場感に溢れてました。いっき読みよ。
つる
2008/08/28 19:56
ありがとうございまっす!<臨場感

なかなか解決しそうにないのが、書いてる側としてもビックリです。
本当はそろそろエンディングのはずだったんだけどな……。
でも続くッ!
鈴藤 由愛
2008/08/28 23:29
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