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zoom RSS 時間よ……

<<   作成日時 : 2008/06/19 22:58   >>

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最近、どうも時間の進むのがおっそろしく早い気がする。

仕事から帰って来てお風呂とご飯を済ませて、ちょっとボーッとしてると、あっという間に寝る時間だ。
当然、まともに家事なんてできやしない。
料理なんて長いことやってないし、部屋を最後に掃除したのがいつだったかも思い出せない。

……いかん、何とかしなきゃ!

そもそも、私の一日のうち、空いている時間ってどのぐらいなのかしら?
私は、二十四時間を区切ってみた。

まずは、仕事でだいたい十時間取られるとして……。
次に睡眠時間に六時間。
通勤にかかる時間と、ご飯とお風呂、その他もろもろで……だいたい三時間ぐらいかな。

とすると、残業がなければ五時間ぐらいは余ってるはず……。

なんだ、結構時間余ってるじゃん。

なのに、どうしてこんなにあっという間に寝る時間になったりするの?
納得いかなーい!
私は五時間もボーッとしてるわけじゃないぞ。

アパートの部屋に帰って来て、テレビを見ながら一人もんもんと考えていると、視界の端っこで何かが動いた。
目を向けると、壁にかかった時計の後ろに、何かがサッと滑り込むのが見えた。

――私は、テーブルの上に置かれた分厚い電話帳を手に取ると、力を入れて筒状に丸める。

もしや、私が見たのは、一匹見つかるとその部屋に三十匹はいると言われている、アレですか?
字は忘れましたが、「ごきかぶり」という名前で辞書に載せられる予定だったのに、うっかり間違って一文字消えた名前で載せられてしまった、アレですか?

おのれ、私の部屋で繁殖しようとはふてぇ奴だ。
即刻、叩き斬って……じゃないね、叩き潰してくれるわ!

この時の私は、殺気に満ちていた。
もう一度時計に目を向けて、文字盤に貼りついているものを、この目ではっきり見るまでは。

「るるるるる〜ん、るんるんる〜ん」

変な鼻歌を歌いつつ、時計の針をガラス越しになでているのは、ゴキブリ……じゃない、黄色い三角帽子に黄色い服、黄色い靴を身につけた、私の親指ぐらいの大きさの、女の子だった。

……小人、ってやつだろうか。

その小人が時計の針をガラス越しになでると、針がくるくる回ってあっという間に一時間が過ぎた。

途端、テレビ番組が早送り状態になる。

「ではまた来週、この時間にお会いしましょう。さようなら」

……おい。
あっという間に番組がエンディングに入ってるぞ。

私は、嫌な予感を覚えて、ケータイを開いた。

……時間、進んでる。

一体何がどうなってるのかはわからないけど……これってつまり、あの小人が原因で、時間がやたら早く進んでる、ってこと?

小人は相変わらず鼻歌を歌いながら、時計の文字盤をガラス越しになでてる。
どんどんどんどん時間が過ぎていく。
――大変だ!
時計の針が、私の寝る時間に差し迫った瞬間、私は動いていた。

これ以上、私の空き時間を削られてたまるか!

私は音を立てないように時計に近付き、がばっ! と小人を捕まえた。
うっかり力を入れて、つぶしてしまわないように気をつけながら。

「きゃあ! 何するのよぉ!」

小人は、私の手の中でじたばたともがいた。

……ちょっと、カワイイ。

「何するのよ、じゃないわよ。あんた、今何してた?」

目の前に持ってきてにらむと、小人はビクッと震えた。

「し、知らないよぉ。いったい何のことぉ? いじめないでよぉ」

うぬぬ……大きな目をウルウルさせてるけど、だまされるもんですか!

「今、時間進めてたでしょ!」

私がビシッと指摘すると、小人は「う」と小さくうめいた。

……図星だな。

「ったく、あんただったのねぇ! どうしてそんなことすんのよ。こちとら、毎日毎日くったくたで帰って来て、家でのんびりするのだけが楽しみだっていうのに、その楽しみすら奪おうっていうの?」 

まったく冗談じゃない。
社会人にとって、空き時間は非常に非常に貴重なものなのだ。
それを知らず知らずのうちに奪われていたのかと思うと、ホントに腹が立つ。

私が怒るのは、至極当然のことだ。

……なのに。

「う……うわああああん!」

私の追及に、小人はぴーぴー泣き出した。
うわ、ちょっとやめてよ……。
被害を受けたのはこっちなのに、これじゃまるで私がいじめてるみたいだ。

「だってだってぇ、小人のお仕事はイタズラすることなのよぉ! あたちはいっしょうけんめい、お仕事してただけなのよぉ!」

小人ってのはイタズラが仕事なんかい。
なんて迷惑なんだ。

「ひどい、ひどいよぉ。人間ってこわいよぉ。ママン、助けてぇ!」

……あんまり泣いてひどいので、私は許してやることにした。

「二度とするんじゃないわよ、わかったわね?」

もう一回同じことしたら、その時は容赦しないからね、という意味もこめてるのだけど……たぶん小人には通じてないんだろうな。

「はぁ〜い」

泣いていたのが嘘のように、にっこり笑ってたから。

テーブルの上に置いてやると、小人はピョンピョンはねて、あっという間にいなくなった。

はあ、これでやたら時間が早く進むことはなくなるのね。
……たぶん。


――それから、しばらく経ったある日。

明日は休みということもあって、ちょっと浮かれて帰って来て、テレビをつけた私は、違和感を覚えた。

あれ?
この番組、昨日も見た気がするんだけど……。
私、働き過ぎで曜日感覚がおかしくなってるの?

いやいや、この番組、昨日見たって。
出演者とゲストの掛け合いなんか、逐一、私の記憶通りだし。
VTRだって、オチまで全部わかる。

なんで?
私って、ひょっとして超能力者?

なんて考えてたら、「はぁい!」っていう能天気な女の子の声がした。
きょろきょろすると、テレビの上に、いつかの小人がちょこんと座っているのを見つけた。

「あ……あんた、また来たの?」

戸惑ってる私に、小人が楽しそうに両手を伸ばしてちたぱた振った。

「ねぇねぇ、あのねぇ、時間を進めちゃダメって言ったから、今度は戻してみたのぉ。びっくりしたぁ?」

――は?

戻した、とな?

私は震える手で、ケータイを開いてみた。
そこには……しっかりくっきり、昨日の日付が……。

私の手から、ぽろ、っとケータイが落ちた。

「時間を戻すのも、ダメーッ!!」

なんてことするんだ、この小人めっ。
明日は休みだったっていうのに、もう一日働けってことかい!


私が絶叫したのは、言うまでもない。



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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
あー、この小人、うちにもいますよ。捕まえないとだめなのね。なんて。
親指ほどの黄色づくめのこの子がなんだか、ものすごく可愛らしく書けてるわ。
「しゃーねーなー、モー」とかで許しちゃいそうよ。
つる
2008/06/20 20:19
感想ありがとうございます。

ゴキブリホイホイの上にケーキでも置いておけば、きっと捕まえられますよ(何
小人を可愛く書こうとがんばったので、可愛く感じてもらえればこれ幸い。
なんか最後では、小悪魔的というか腹黒い感じになってしまいましたが。
男だったらイチコロかな? ダメかな。

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤 由愛
2008/06/20 22:00
こんばんは。
更新がなかなかできませんって話をするのかと思いました。笑
こんな小人、見てみたいですね。
いや、関わりたくありませんけど。爆

でも時間を戻してくれたら、楽しかった日であれば二倍楽しめるからいいかもしれませんね^^
けビン
2008/06/27 22:39
感想ありがとうございます。

いや、時間がないのは確かなんですけどね。
この小人はきっと、遠足の前の日に戻したりしますよ。
でもそれはそれで楽しいか。
私は日曜日に戻して欲しい……。

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤由愛
2008/06/28 06:48
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