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zoom RSS 足元からの危機(十ニ回目)

<<   作成日時 : 2008/04/06 21:21   >>

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人生は、選択の連続だ。

……と、卒業式の後、教室で担任が言っていた。

何となくだったり、ものすごく悩んでのことだったりするけど、選んで選んで、選びまくって今に繋がってる――とまあ、そんな話だった。

もうちょっと何か言ってた気がするが……思い出せん。

オレは、頭をかいた。


担任のことはどうでもいい。
さて、どうしたもんか。
今まで進んできた通路が、三つに別れている。
右に行くか左に行くか、それとも前か…… ううむ、ちーーっともわからん。

たぶんこういうのは、一つだけが正解で、残り二つはハズレだろう。
でもって、ハズレを選ぶとロクなことにならないに違いない。
長年ゲームで培ってきた、オレの知識がそう告げている。

延々進んだ揚げ句行き止まり、っていうのならまだ良い。
イヤな罠が仕掛けてあったり、最悪死ぬ羽目になったりしたらたまったもんじゃない。
リセットを押してやり直すわけにもいかんのだ。
ここは慎重に、当たりを見つけなくては……。

で、悩んでるうちに、担任の話なんか思い出しちゃったわけで……。
つまり、ちーっとも当たりが見つけられないでいるのだ。
都合よく目印なんかついてるわけもないし、違いも見つけられない。

あー……うー……。
なんか、使えそうなモン入ってねえかな。

オレは、ショルダーバッグを降ろして、ガサゴソまさぐった。
まさぐっていると、金属製の棒が出てきた。
引っ張り出して観察してみるが、何に使うのかちーっともわからない。
振ったら長くなったりすんのかなとも思ったが、何回振ってもブンブン風を切る音しかしない。

……そうだ。

オレは、棒をまっすぐ立てて指で押さえた。

考えても答えが出ねえなら、運任せで決めてやる。
この棒が倒れた方向に進もう。
テストだって、わかんない問題は鉛筆転がしてアイウの中から選んだりしてるんだし。

……ただ、テストと違って、この場合取り返しがつかないのが致命的だけどな……。

覚悟しつつ指を離すと、棒はくらりと倒れていった。

……結果、オレは、盛大に頭を抱えた。

どういうわけか、棒は今進んできた方……つまり戻る方向に倒れたのだ。

おいおい、戻ってどうする。
進まにゃいかんのだそ、進まにゃ。

オレはもう一度棒をまっすぐ立てて指を離す。

……おう。

またしても棒は同じ方向に倒れた。

戻っちゃダーメーだっつーの!
オレはもう一度同じことをする。
棒は……やっぱり、同じ方向に倒れる。

……はいはい。
わかりましたよ。
戻れってんだろ、わかりましたよ。
そんなに戻って欲しいんなら戻ってやりますよ!

オレは、ショルダーバッグを肩にかけて、元来た道をずんずん歩いた。

しばらく歩いて行くと、何かのぶつかり合うような音や、うなり声が聞こえて来た。

何の音だ?

慎重に近寄って行ってみると、なんと、タマちゃんがマッチョ男と戦っていた。
そのマッチョ男は、さっきオレが豆を投げ付けて悶絶させた奴だった。

くそっ、復活しやがったか!

オレは慌てて豆を一つかみすると、タマちゃんに拳を振り上げているマッチョ男に投げ付けた。
豆が命中すると、マッチョ男は「ぎゃああっ」と叫んで倒れる。

「あるじ……」

タマちゃんが、驚いた、と言わんばかりにオレを見ていた。

「逃げるぞっ」

オレがそう言うと、タマちゃんはマッチョ男を飛び越えてきた。
オレ達はそのまま、さっきの三つに別れたところまで走った。
マッチョ男が追いかけてくる気配はない。

「……あるじ、もしや、我を助けるために戻ってきたのか?」

そこまで来て、タマちゃんがオレをじっと見つめて口を開いた。

あー……。
もしそうだったら、オレってすっげぇカッコイイよな。
ヒーロー、って感じだよな。
でもなあ、違うんだよなあ。

「うんにゃ」

嘘をついて後々ツライ目にあうのも嫌なので、オレは正直に言うことにした。

「ここ三つに別れてるだろ。どこ行こうか迷って棒倒して決めようと思ったら、戻る方に三回倒れたから、頭きて戻ったの」

タマちゃんが、オレをじぃ〜っと見ていた。
お願いやめて、そんなに見ないで。

「あるじ」

やがて、タマちゃんが口を開いた。
その目は、ひっじょーに冷たい……。

「何だよ」

「一言言っても良いだろうか」

「どうぞ」

オレ、タマちゃんと心が通じ合ってきたんじゃないかな。
以心伝心、ってやつか?
そんな感じで。

だって、オレが言われるんじゃねえかって思った通りのこと、タマちゃんが言ったんだもん。

「馬鹿者」

あう……。

「あるじ、大事な選択をよりにもよって棒の倒れる向きで決めるとは何事だ! たまたま無駄にならずに済んだが、前に進むべき時に戻ってくるなど、愚かにもほどがあるぞ!」

ひいいっ、怖いよタマちゃんっ、キバむいて怒らないで!

「まったく、我がいなければ進む方向一つ選べぬのか。行くぞ、ついて来い」

タマちゃんはクンと一回匂いをかぐと、右の通路に進んで行った。

オレは、先に進み出したタマちゃんの後ろに、おとなしくついて行った。
情けない気持ちを思いっきり引きずりながら。






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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
ああ、タマちゃんがいれば百人力です。良かった。
>人生は、選択の連続だ。
ほんと、そう思います。どれが欠けても、今の自分はなかったんだなあってよく思いますもん。
つる
2008/04/07 00:58
ゲーマーとは思えない安易な道の選択方法(笑)
前回の罠と言い、豆のアイテムといい、ゲームみたいでワクワクします。
タマちゃん、やっぱりイイなぁ。
強がり言ってるけど、絆は深まりましたよね。
ia.
2008/04/07 02:28
感想ありがとうございます。

つる様>タマちゃんがいないとコイツ駄目だ、と思ったので無理矢理合流させました。
人生は選択の連続ですよね。
後悔しない選択したいです。

ia.様>主人公は基本バカタレですから!
せめてコインで決めればクールですが、そんなかっこいい真似をさせるわけにいきませんっ。
ひょっとして、主人公よりタマちゃんの方が人気ある……?

よろしければ、またおいで下さいませ。

鈴藤由愛
2008/04/07 07:18
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