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zoom RSS 足元からの危機(五回目)

<<   作成日時 : 2008/03/18 22:32   >>

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オレは、ウキウキしつつ廊下を歩いていた。

目指すは職員室。

オレは、次の授業の数学の教科係なので、前もって授業のことを聞いておかにゃいかんのだ。
本当なら、かったるい事この上ないだろうが……実は、うちのクラスの数学を担当してるのは、清楚な顔の美人さん、あやめ先生。
とにかく男子から絶大な人気がある。

こりゃもう、数学の授業が楽しみにならないわけがない!
ウキウキだってしちまうさ、ああ、しちまうさ!

先生とお近づきになれる数学の教科係という役職は、当然、ものすごい競争率だった。
オレは、じゃんけんで十二人勝ち抜けて、この役職をつかみ取ったのだ。

ふっふっふ、今行くぜ、あやめ先生っ。

職員室のドアを開けて、

「しっつれいしまーす、あやめ先生……」

とまで言いかけて、俺は固まった。
あやめ先生の机に、スーツ姿の知らない男がいたからだ。


「あ、あれ。あの、あやめ先生は……」

「あやめ先生?」

近くにいた別の先生に聞いてみると、

「机にいらっしゃるじゃないか。まさか、見えないのかい?」

さも当然、という口調で返された。

「あ、あの、でもあやめ先生って女の人じゃ……」

「何を言ってるんだ。しっかりしなさい。菖蒲龍一郎(あやめ りゅういちろう)先生のことを忘れてしまったのかね」

う……嘘だーっ!
あやめ先生は、フルネーム坂上あやめ、二十六歳、清楚な顔の美人さんだ!
間違っても、あんな、メガネかけた厳しそうなスーツ男じゃないやい!

「ほら、まあとにかく菖蒲先生はあそこだから。用があるなら行きなさい」

えー……。
あやめ先生は絶対アイツじゃねえってばー……。

ふに落ちないままスーツ男の所に行った。

「先生、数学の教科係です。次の授業のことを聞きに来ました」

スーツ男は、メガネの奥から眼光鋭くオレを見た。
……うっわ。怖えぇ。

「そうだな。このプリントを配っておいてくれ」
「は……はい」

震える手でプリントの束を受け取るオレ。

ううう、あやめ先生、オレのあやめ先生はどこに行ったんじゃー!

「し、失礼しました」

足取り重く職員室を出ようとすると、何でだか突然背中がぞくっとした。
自分でもどうしてそんなことしたかわからないが、オレは無意識のうちに振り向いていた。


……スーツ男と目があった。


オレは慌てて視線をそらし、さっさと職員室を出る。

あのスーツ男、なんか、オレのこと、にらんでいたような……?


その後の数学の授業は、特に何事もなく終わった。
スーツ男の教え方は問題ない……というか、上手な方だと思う。
女子からは熱い視線を集め、男子からは嫉妬とイライラの視線を集めながら、そつなく授業を進めていた。

オレは……というと、授業中、猛烈に片目がかゆくてたまらなかった。
保健室に行こうか、本気で悩んだほどだ。


「なんだ? お前また目がかゆいのか?」

昼休み、一緒に弁当を食っているサトルがオレの顔をのぞきこんできた。

「おう」

オレは無愛想に答える。
目がかゆくってたまらなくて、とてもじゃないが愛想よくなんてしてられない。

「今年で何回目だよ。ものもらいの当たり年か?」

「かもな」

ああ、もう駄目だ。
水飲み場で目を洗ってこよう。

オレは、ガタンと席を立った。

「お、保健室か?」
「もうちょっと様子みるわ。目洗ってくる」

歩き出そうとして、オレはふとサトルに聞いてみる気になった。

「なあ」
「ん」

「女の先生でさあ、坂上あやめっていう人、学校にいなかったか?」

「……お前、頭大丈夫か」

サトルがオレの頭に手を乗せようとしてきたので、その手を押し戻してやった。
……やめい。男が男に気遣われても虚しいだけだ。

「そりゃ、女教師は嫌いじゃないけどな。いっそのこと、ぜ〜んぶ女教師に教えてほしいもんだな。うんうん」

サトルはその後、「女教師といったら、やっぱりタイトスカートだよな」だの「素直でカワイイ先生もいいけど、やっぱ叱られたいな」だのと一人ぶつくさ言っていた。

オレは、片目をこする。
うーん……これは何だか、妙なことになってるぞ。
妙なこと、というのはオレの目のことじゃなく、あやめ先生のことについて、である。
あやめ先生は女だ。
絶対に、絶対に、あのスーツ男なんかじゃない。
なのに、今日になって突然、違う人物が「あやめ先生」のポジションにいるなんて、絶対におかしい。

家に帰ったらタマちゃんに聞いてみるか。
詳しい話は忘れたけど、すごい血筋の犬だとか言ってたし、何か知ってるかもしれない。


オレは、水飲み場に向かった。




――放課後。


オレはそそくさと帰る支度をして、教室を出た。
今週はバイトもないし、散歩がてら、タマちゃんに話してみよう。
しかし、やっぱり目がかゆくてたまらない……散歩の前に医者に行ったら、タマちゃん怒るかな。


…………。


黙々と廊下を歩いていたオレは、ふと足を止めた。

何か変だぞ、この廊下。

ホームルーム終わったばっかりなのに、誰もいないし。
さっきから結構な距離歩いてるのに、現在地変わってないし。
もしかしてオレ、ヤバイ事になってるんじゃ……。

片目をこすって考えていると、廊下の向こうから、人影が現れた。


「無駄だ。お前は私の作った結界の中にいる。どこへも逃げられはしない」


スーツ男が、うっすらと笑っていた。






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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
この子久しぶりだわ。
いつもへんなことに巻き込まれちゃうのよね、確か。どこに着地するんだろう。
そうそう、記事に一〜四回までリンク貼ったらどうでしょう。
つる
2008/03/20 01:01
感想ありがとうございます。
ええ、なんだか最近「これ完結させなきゃああ!」という妙な気合いが入りまして、書きました。
今回からは「変なこと」どころか「危険なこと」に巻きこまれます。
でも着地点はまだまだ霧の中。

リンクか、やっぱり貼ったほうがいいですよね。
後ほどペタペタと。

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤 由愛
2008/03/20 11:11
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