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zoom RSS 紆余曲折

<<   作成日時 : 2008/01/25 23:05   >>

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あるところに、小さな王国があった。

その王様は、隣の国との戦争のため、しばらく戦場を駆けずりまわる日々を送っていた。
王様は有能な部下に恵まれ、自分自身も強かったので、戦争に勝つことができた。
負けた国の王様は戦場で命を落とし、息子である王子は兵を撤退させた。


「皆のもの、よくやった。さあ、胸を張って帰ろう」


一同は華々しく凱旋することとなった。

王都に着くと、集まった国民達は熱狂して出迎えた。
あちこちから、「王様バンザイ」「王様に栄光あれ」と誉め称える声があがる。
高い所に上がった若い娘達が、美しい花びらをまき散らす。

王様は終始にこやかな顔をしていたが、内心、早く城に帰りたくてたまらなかった。
実は、城に残してきた王妃様のことが気になって仕方なかったのである。

王妃様は、黒い髪に真っ白な肌の、まるで女神のようと例えられるほどの美女である。
見た目の美しさだけが自慢なのではなく、心も清らかで優しい女性である。
もともと別の国の姫だったが、継母にいじめられているところを、たまたま滞在していた王様に救われ、共にこの国へ来て、王妃として迎えられたのだ。

王様が戦争に勝てたのも、そんな不幸な思いをした妻に勝利を捧げたいという思いからだった。


しかし、城に帰りついた王様は、思いもよらない話を聞かされた。
つい先日、王妃様が持病の発作で亡くなったというのである。

王様は最初信じなかったが、寝台に寝かされた遺骸を目の当たりにすると、わあっと声を上げて泣いた。
それからというもの、王様は特別に作らせたガラスの棺に王妃を寝かせ、毎日のようにその前で泣いた。

そしてある日、王様は奇妙なお触れを出した。


「我が妻を生き返らせよ。それが出来た者には、どんな褒美でも取らせる」


すると、遠い外国から取り寄せた生き返りの薬やら、秘術の使い手やら、色々な物や人が集まった。
集まった人間は、もっともらしい事を並べ立てた。
しかし、全てでたらめだった。
王妃様を目の前で生き返らせてみよと言われると、皆言い訳をして逃げ出すのだった。


「王妃……王妃……お前がいない世界など、余にとっては意味がないのだ。どうして余を残して逝くのだ……?」


王様が失意のどん底をさまよう中、、一人の男がふらりと城を訪れた。
旅人だという男は、王妃様を生き返らせる方法があると言った。

こいつもでたらめを言っている、と兵士は無視しようと思ったが、あんまりしつこく頼むので、王様に取り次ぎ、城の中へ入れてやった。

ガラスの棺に眠る王妃様に対面した男は、ハッとした表情を浮かべると、突然王妃様を棺から抱き起こし、唇にそっと口付けた。

王様は何をするんだと怒鳴りつけそうになったが、これも王妃を生き返らせるためだと思い、必死にこらえた。

しばらくすると、王妃様の顔に赤みがさし……そのうち、ぱっちりと目が開いた。

「おお、おお……奇跡だ!」

王様は感激に身を震わせながら、王妃様を男から奪い返すかのように抱きしめた。

「王様、感動なさるのは良いのですが……お忘れになっては困りますよ」

男が立ち上がり、冷静な目で王様を見下ろす。
不遜な態度だが、喜びの方が大きい王様はそんなことを気にしなかった。

「あ、ああ、褒美のことか。何が欲しい、申してみよ」

「王様。本当に、どんなものでも下さるのですか?」

「余を見くびるな。山のような金貨でも、貴族の称号でも、何でもくれてやる」

「その言葉を聞いて、安心しました。それでは、私が欲しいのは……」


言うと、男はそっと手を差し出した。

――王妃様に向かって。


「私が欲しいのは、王妃様です」

「なっ……!?」


王様は思わぬ言葉に絶句した。


「馬鹿を申すな、そんな事が認められるはずもなかろう!」

「話が違うじゃありませんか。何でも下さるのではなかったのですか?」

「それとこれとは別だ!」


その時、王妃様が王様をそっと押し退け、男の元へと歩み寄った。
そして、頬を上気させながら、うるんだ瞳で男を見つめた。


「わたくし……わたくし、どうしたのかしら。何だか、貴方をずっと待ち続けていた気がしますわ」

男は、王妃様を抱き寄せると、その眼差しを受け止めた。

「王妃様、私もなのです。ガラスの棺に入れられたあなたを見た瞬間、運命的なものを感じました。自分のすべき事が何なのか、やっとわかったのです」


二人はお互いを見つめ、やがて手を取り合って歩き出した。

王様は、惨めさと怒りと悔しさと、とにかく色々な感情がごちゃ混ぜになっていたが、不思議と二人を追いかける気にはならなかった。

何となく、自分は部外者なのだという意識が働いていた。
あの二人の寄り添う姿は正しいのだと、頭の片隅でそんな奇妙な考えが浮かぶ。

――王様は抜け殻のように、その場に立ち尽くしていた。

いつまでも、いつまでも。



「私は、本当はあの時、王様を殺すために城に入ったのです。戦死した父上の仇を取るために……」

「まさか、王様が戦争をした相手が、あなたの国だったなんて……」

「父上が戦死したことで、私が王になりました。私はもう王子ではないけれど……それでも良いですか?」

「わたくしこそ……毒リンゴを食べて眠ってもいないし、お姫様でもないけれど、それでも選んでくださる……?」

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
あ、王様はただの脇役だったんだ。
これ読んでてちょっと裏切られた感じで面白いな。
つる
2008/01/26 15:51
感想ありがとうございます。
書き始めた時は確かに王様が主役のストーリーだったのに、ブログに載せる頃には違う話になり、王様もすみに追いやられていました。
王様ごめんなさい。

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤由愛
2008/01/27 20:12
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