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<<   作成日時 : 2008/01/11 22:10   >>

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とある村に、神様が住むという小さなほこらがあった。
村人達は自分の畑で採れた野菜をお供えしたり、収穫した米で作った餅をお供えしたりしていた。

お供えをするたび、村人は願い事をした。

「神様、うちの母ちゃんの目を治してやってください」
「神様、恥ずかしい話ですが、息子が女遊びにうつつを抜かしています。なんとか目を覚まさせてやってください」
「神様、一度でいいから腹いっぱいまんじゅうが食べたいです」

願い事は、せっぱ詰まったものもあれば、微笑ましいもの、呆れてしまいそうなものもあった。
共通しているのは、村人達の願いは全て叶えられたという点だ。

「ありがたや、ありがたや」

願い事が叶った村人は、お礼にまたお供え物をするのだった。

その話を人から伝え聞いた金持ちは、目の色を変えた。

米や野菜を供えるだけで願いごとを叶えてくれるなんて、夢のようではないか。

なあに、おれは金を持っているから、けちな真似はしない。
上等な餅や甘いお菓子を山のように供えてやる。
それに加えて、たっぷりとお賽銭もしてやろう。
そうすりゃ、神様だって大喜びでおれの願い事をいくつでも叶えてくれるに違いないさ。
おれはもしかしたら、そのうちこの世で一番偉い人間になるかもしれないぞ。

金持ちは金に糸目をつけず、それを実行した。
たくさんの店の高級なお菓子を買い占め、夜も明けぬうちから餅をつかせ、多額のお賽銭と共にほこらの前にお供えした。
その量といったら、ほこらが埋もれてしまいそうなほどだった。

金持ちは、お賽銭を置こうとして賽銭箱がないのを少しばかり不思議に思ったが、「こんな貧しい村だから、お金なんてとても差し出せないんだろうさ」と考え、巾着袋に入れて置いて行くことにした。

「さあ、これだけお供えすれば、神様だって文句はあるまい」

金持ちは、早速願い事を言い始めた。

もっと金持ちになりたいだの、若くてきれいで気立てのいい女を嫁にしたいだの、自分の老後を任せられるような立派な跡取り息子が欲しいだの、自分を美男子にしてくれだの、とんでもない欲の突っ張りようだった。

金持ちはなかなか願い事を言い終えず、やがて日が暮れようという頃になって、ようやく収まった。

「よしよし、これでおれの人生は安泰だ」

帰る道すがら、金持ちは顔がにやつくのを押さえられなかった。


しかし、待てど暮らせど、金持ちの願い事が叶うことはなかった。

これでは、高級なお菓子を買い占めた代金や、餅をつかせた代金、お賽銭がまるまる損である。

一般に、金持ちほど金のことには執着する。
金持ちはその日から、自分が損をした金のことが頭から離れなくなった。

一体なんだって言うんだ、こんちくしょう。
おれは村人よりも素晴らしい供え物をしてやったじゃないか。
それにお賽銭だって、たっぷりと。

なのに願い事を叶えないとは、一体どういう事だ?


ある日、とうとう腹にすえかねた金持ちは、ほこらに向かった。

金持ちがほこらの前にやってくると、一人の村人がほこらの掃除をしていた。
頭に血が上っていた金持ちは、村人をつかまえると、自分がほこらに一体どれだけのお供え物をしたか、つばを飛ばしてわめき散らした。

「あんた、それは自分の手でしたことかね?」

ほこらを掃除していた村人は、金持ちの話を聞き終えると眉をしかめて告げた。

「餅をお供えするなら、餅米を自分で植えて育てるところからしなきゃ駄目だよ。野菜をお供えするのでも、同じこと。自分のお願い事を叶えてもらうっていうのに、人が育てたもんや作ったもんを供えて、どうかお願いします、なんてむしのいい話があるもんかね」

貧しい連中めと内心バカにしていた村人に、思わぬ説教を食らった金持ちは、思わず言葉に詰まった。

「だ、だが、おれはお賽銭を」

うろたえながら反論しようとすると、村人は、ふん、と鼻を鳴らした。

「おいら達が餅や野菜をお供えするのは、それを神様が召し上がるからだよ。あんたは神様がお金を召し上がると思ってんのかい?」

金持ちは、真っ赤な顔でうつむくばかりだった。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。
これ、いいわあ。
道徳とか国語の教科書に選定したいくらい。
長さも丁度いいし、
金持ちの願い事が叶わないのは何故?何故?
って思いながら
あっと言う間にラストまでスラスラ読めちゃいました。
推敲に時間をかけたのか、それとも流れに乗って勢いで書いたのか、
すご〜く気になっちゃいます。
つる
2008/01/12 00:40
感想ありがとうございます。
ほめていただいて恐縮です。
今回、推敲はあんまりしてません。
時間がなかったんです。
実は別の話を書いていたのですが、途中で気が変わってこのお話を書き始めたからです。
金曜日に更新するっていうのに、書き始めたのが木曜日でした。
なので、完全に勢いだけで書きました。
もっと推敲に時間をかけられるような書き方ができるようになりたい……。

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤 由愛
2008/01/13 22:25
これはいい話ですね。
こういう神様なら、真面目に願えば叶えて
くれそうですね。
楽しめました!
銀河系一朗
2008/02/13 23:46
感想ありがとうございます。
この話、神様はこうであって欲しいなあという願望がちょっと入ってます。
神様には、お賽銭をたくさん上げる人じゃなくて、努力した人を見て欲しいです。
人間の社会はなかなかそうは行きませんから。

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤由愛
2008/02/14 21:53
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