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<<   作成日時 : 2007/12/21 22:49   >>

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失恋した。

三年付き合った彼氏に、「他に好きな人ができた」って言われて、ジ・エンド。
彼氏への愛情が冷めてたわけじゃないけど、でも、「他に好きな人ができた」って言われちゃ、もう私がどんなに頑張っても元には戻れない。

こればっかりは、しょうがないもん。
人間の気持ちって、いつまでも同じ所には留まっていられないんだから。
どんなに好きになったって、いつかは飽きたり嫌いになったりする日が来るんだから。

経験上、それはわかってるから、私は彼と別れてあげた。

バイバイ、その「好きな人」とうまくやりなよ。

彼が私の前から歩いて去っていった後、涙が止まらなくなった。
泣き顔を見られるのが嫌で、私はずっとうつむいたまま歩いた。

……だけど。

たった一つだけ、許せないことがある。


「よりにもよって、クリスマスイブに振るかなぁ」


……あ。

口に出して言ったら、また泣けてきた。



私は、バッグを開けてポケットティッシュを探した。
ハンカチはもうぐしょぐしょで、役に立たないのだ。

取り出すついでに、目に映った小さな白い箱。

――本当は彼にあげる予定だった、クリスマスプレゼント。

もう、行き先のないプレゼント。


いいや、もう。
ここに置いて行こう。

一生懸命バイトして買った、彼がいつか買うんだって言ってたリング。
振られるってわかってたら、バイトなんかしなかったのにな。
意地悪な先輩とかに嫌味言われても、我慢して働いてたのにな。

……もういない相手に言ったって、仕方ないけど……。


みゃあ。

その時、小さな鳴き声がした。
足元を見ると、いつの間にか子猫がちょこんと座って私を見ていた。
真っ白な毛に青い瞳のコで、普段ならカワイイって喜ぶところだけど、今の私にそんな心の余裕はない。
ただ、うっとおしいだけだった。

「あっち行ってよ」

みゃあ。

「あっち行ってったら。一人になりたいのよ」

みゃあ。みゃあ。

「…………」

みゃあん。みゃあーん。

子猫はしつこかった。
お腹が減ってるのかもしれない。

みゃあーん。みゃああーん。

「あーもう!」

私は、子猫を抱き上げた。
子猫って普通はふわふわしてるものだろうけど、こいつはなんかごわごわしていた。
……捨て猫、なんだろうな。
私は、子猫を連れて帰ることにした。

……ちっぽけな生き物の温もりを、今は無性に手放したくなかったから。



――それから、三ヶ月後。



クリスマスイブに拾った子猫は、イヴという名前で私が飼っている。

で……。


みゃーっ! みゃあーっ!


「あーもう! うるさいっ」

私は、読みかけていた雑誌を置いて立ち上がる。

イブは甘ったれで、私がかまってやらないとわざわざ物陰に行って大きな声で鳴く。
で、私が迎えに行ってやると……。

みゃあん。

やたらカワイイ声で鳴いて、ゴロゴロのどを鳴らして足にスリスリしてくる。

くっ……この、ワガママ姫めっ。
でも、この甘える姿がめちゃくちゃカワイイ……ッ!


私は、イヴを抱き上げる。


クリスマスイブに振られるなんて、最悪の出来事だ。
二度と経験なんかしたくない。
でも、それがイヴに出会うきっかけになったのかもと思うと、本当に最悪なのかどうか、自分の中でちょっと迷う。
……イヴに出会えたことは、不幸な出来事なんかじゃないから。
それにイヴだって、あのままじゃ凍え死んでたかもしれない……ってこう考えるのは、私が猫バカになってるから、かな?

「イヴ〜」

みゃあん。
私の腕の中で、イヴが返事をする。

「今年のクリスマスイブは、素敵な彼氏を紹介できるように頑張るからね」


私は、腕の中のイヴにそう誓ってみせた。


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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
イヴにはちょっとせつないお話だけど
三年つき合ってっていうところが妙にリアルかも。イヴじゃなくても遅かれ早かれ仕方がなかったんだろうね。何も当日じゃなくったってっていうところによく彼の優柔不断さが出てるし、この子にとっては、にゃんことの出会いの方が大事だったかもね。ふられたようでいて、でもなんか後味のいいお話でしたよ。にゃんこの描写が良かったからだな、きっと。あのキーボードで邪魔するにゃんこかな?
つる
2007/12/24 22:22
感想ありがとうございます。
クリスマス近いってことでクリスマスをお題にした話にしようとしていたのですが、書き出しては中断、書き出しては中断、という事態が連続して起きまして、このお話だけをなんとか書き終りました。
正直自信がなかったので、感想いただけてホントに嬉しいです♪

鋭い!<あのキーボードで〜
にゃんこの描写は、うちの娘達(猫二匹)がモデルです。
いやー、物陰に行って鳴き声上げられたり、一緒の布団でぎゅうぎゅうになって寝る羽目になったり、下品な話ですが、一匹(元捨て猫の方)はトイレにまでついて来られますよ。
集中できないからやめてー!と言いつつ、来てくれないと寂しかったりして……。

よろしければ、またおいで下さいませ。
次が今年最後のお話になると思います。
鈴藤 由愛
2007/12/26 23:02
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