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zoom RSS うねうね物語

<<   作成日時 : 2007/11/30 22:18   >>

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ある日、いつものように家に帰ると、母が玄関前で立ち尽くしていた。
今朝会社に行った時の服だから、おそらく会社から帰ってきてそのままこうしているのだろう。

「どうしたの?」

私が声をかけると、

「玄関に変なものがいるのよ、ちょっと見て!」

母はただならぬ表情でまくし立て、私の背中をぐいぐい押した。
気は進まなかったが、ここでじっとしていてもらちが明かないので、開けっぱなしのドアから玄関をのぞいてみた。

「うわ」

思わず声が出た。
玄関マットの上に、うねうねとうごめく巨大な丸っぽい物体がいる。
その形は、こないだ食べた水まんじゅうに似ている。
なんとも不気味な……。

「お母さん、これ何?」
「私にわかるわけないでしょ」

まあ、そりゃそうだが。

「どうしよ。これじゃ入れないよ」
「お父さんは今日残業で遅くなるって言ってたから、アテにはできないわね」

……ってことは。

「自分で何とかしなきゃいけないのね」
「まあ、そういうことね」

私は物置から棒を取り出すと、それでつついてみた。
うねうね(正式名称がわからないのだから、そう呼ぶしかない)は、つまらなそうにぶよぶよ揺れるだけだ。

「どう?」
「んー……どかない」
「どうしましょ。警察に連絡してみる?」
「これ、警察が相手してくれるかなぁ」
「じゃあ、消防かしら?」

私は一瞬、消防車がウーウーとやかましくサイレンを鳴らしてやってくる様子を想像した。
我が家の前で停車した消防車から降りた消防士が、ホースをかまえ、

「放水開始ー!」

…………。

「いや、違う気がする……」

なんだか疲れを感じてもう一度うねうねに視線を移すと、底の方に、黒っぽい何かが見えた。
一体なんだろうか。
おそるおそる近寄って、目をこらしてみると……

靴をはいた、人間の足先が出ていた。

「ぎょえええええええっっ!」
「な、何、どうしたの!?」
「人、ひと、人ぉおお!」
「ええっ!?」
「けーさつ、けーさつ呼んでーーーー!」

――その後。
駆けつけた警官が警棒を振りまわしてみると、うねうねはしぶしぶ、という感じでもぞもぞと移動した。
うねうねのいた所には、なんと、溶けかかった人が出てきたという。
……私や母が見ようとしたら、「ちょっと状態がひどいですから」と言われ、隠されてしまったので、どういう状態か具体的にはわからない。

とにかく、その溶けかかった人は、顔やら何やらぐちゃぐちゃで身元がわからなかったそうだが、DNA鑑定の結果、指名手配中の連続婦女暴行犯と判明した。

「おそらく、家の中で待ち伏せて、帰宅したところを襲うつもりだったのでしょうね」

と、警察の人は言っていた。
犯人の常套の手口だそうだ。

私はゾッとした。
もし、うねうねがいなかったら、どうなっていたことだろうか。
うねうねは、私と母をその危機から救ってくれたことになる。
……入ってきた人間なら誰でも食べてしまうつもりだったのだが、たまたま婦女暴行犯が先に家に入り込んだだけで、本当は私か母が犠牲になっていた、という可能性もあるけれど。

まあ、それはさておき。
以来、我が家のリビングには巨大な水槽があり。

「うねうね、ゴハンだよ〜」

強盗殺人犯から私と母を守った、ということで守り神扱いになったうねうねが、今日も今日とてふるふると震えながら、私の与えるエサを呑みこんでいる。
ちなみにエサは、こんにゃくだ。
なんとなく、似たような感触っぽいので選んでみたが、文句も言わずに食べてくれている。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
うねうねはきっとあれだ。
スライムみたいな形なんだな。
なんとなく感触がわかる気がする。
つる
2007/12/02 00:17
感想ありがとうございます。
スライムっていうと、でろ〜っとしたおもちゃの方か、某ゲームのどっちかですよね。
「スライム」って明記しちゃうと、なんかどっかから文句が来そうで怖かったので、うねうねという名前にしました。

感触ですか。
書き手としては、つるんぷるんで(謎)触っても手にくっつかない程度に柔らかいのをイメージしてます。
夏は冷やすとちょうどいい、みたいなのを。

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤 由愛
2007/12/03 22:26
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