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<<   作成日時 : 2007/11/02 22:25   >>

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「ビンの中にお菓子を入れておくと、お星様が食べに来るんだよ。で、ビンって小さいから、お星様は出られなくなって、そのまま捕まえられるんだ」

オレが言うと、目の前のちびすけはきょとんとした顔をしていた。

日曜日の昼下がり。
母さんの妹夫婦が子供を連れて遊びにきていた。

母さんの妹の子供、っつーことはオレにとっては従兄弟にあたるわけで。
オレは十四歳だが、この従兄弟はまだ三歳。
なので、オレはつい「ちびすけ」と呼んでしまう。
このちびすけの反応がいちいち面白くて、オレはいろいろとでたらめなことを教えてしまう。

……のだが。

「えぇ〜っ? ほんと?」

ちびすけは、なんだか疑わしそうにオレを見た。
ちっ、いっちょまえに成長しやがったな。

「ホントホント。オレ取ったことあるもん」

オレは笑いつつ、あくまでも押し通す。
今さら「はい嘘でした」なんて認めるもんかい。

「うっそだー」
「嘘じゃねーよ」
「じゃあ見せてよー」
「駄目駄目。捕まえたお星様は、だんだん小さくなって、そのうち出てっちまうんだよ」
「うー……」

ちびすけはやっと納得してくれたらしく、ちょっと黙りこんだ。
ふう、知恵をつけてくると相手するのも大変だな。

「クッキーもっといるか? 母さん、今日はりきって焼いたから、たくさんあるぞ」

オレがお菓子をすすめようとすると、ちびすけがオレをじっと見上げてきた。

「ねえねえ」
「何だ?」
「兄ちゃんの時は何をビンに入れたの?」

ギク。
その質問は想定してなかった……。

「う? んー……オレはクッキー入れたよ」

適当なのが浮かばなくて、オレは目の前にあるものを答えた。

「ふーん。クッキーか」

ちびすけはソファーから立ちあがると、母さんに「空きビンちょうだい」とねだり始めた。
おいおい、さっそくやるのかよ。
行動が早いのは良いことだけどさ……。

夕食後、キッチンの窓辺にはいつの間にか空きビンにクッキーを入れたものが置かれていた。
そのクッキーは間違いなく、母さんが焼いたヤツだった。

夕食を食べた後、母さんの妹夫婦とちびすけは帰って行った。

「兄ちゃん、次に来る時、お星様見せてね!」

ちびすけは、しっかりクギをさして行った。
まあ、次に来る時には忘れてんだろう。

オレは深く考えず、その後いつも通りに過ごして寝た。


「ちょっと、起きなさい! 早く! 起きなさいっ!」

次の日、目覚し時計が鳴るより早く、オレは母さんにたたき起こされた。
ホントは起きたくなかったが、あまりにしつこいのでしぶしぶ目を開けると、とんでもない形相の母さんがどアップで迫っていた。

「な……なんだよ」
「ぐーすか寝てる場合じゃないわよ! ほら、早く着替えて! リュックに必要な物入れて! お父さんが車の中で待ってるから、急いで!」
「へ?」

いきなりリュックをつきつけられて、オレは面食らった。

なんだ?
母さん、一体何をそんなに慌ててるんだ?
今日、どこかに行く用事なんてあったっけ?

そんな疑問にとらわれていると、

「いいから早くしなさいっ!」

母さんの怒鳴り声に蹴飛ばされるようにして、オレはあたふたとリュックに荷物を詰め込んだ。
衣類とか、食べかけのお菓子やジュースなんかを。

「母さん、何があったんだよ?」
「地球に隕石が近付いているんですって! でも、その大きさが今までにないぐらい巨大で、小惑星ぐらいあるらしいの。このままだと確実に地球にぶつかるって言って、みんなが大騒ぎよ。この辺一帯は物凄い被害が出るとか……!」
「ああ、それで……」

確かにそりゃ、寝てる場合じゃないわな。
詰めこみ作業を終えたオレは、パッと着替えてキッチンに向かった。
緊急事態だからって、腹ぺコで行動するわけにもいかない。
冷蔵庫の中のヨーグルトを腹に押しこむと、水をがぶ飲みした。

そこで、ふと昨日の空きビンのことを思い出し、窓辺に視線をやった。
母さんお手製のクッキーが入った、あの空きビン。
ビンは昨日と同じく、窓辺にあった。


……そういえば、隕石ってのは地球以外の天体の小片だって言うから、これって「お星様を捕まえた」ってことになるんだろうか……?

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。
御伽噺のようです。題名もぴったり。読んだ後に読み手にいろいろ想像させる遊び心を感じますね。
由愛さんは「もしもの世界」とか「王様の料理」とか、ちょっとメルヘンはいったものが得意だと思います。メルヘンはいってるんだけど甘すぎない味付けがうまいと思います。抽象的でごめんなさい。うまく言えないです。
次回も楽しみにしています。
つる
2007/11/03 00:09
感想ありがとうございます。
うーん、自分で考えても、メルヘン系の方が得意というか、書きやすいですね。
日常生活をテーマにすると、田舎暮らしゆえの「地下鉄ってどんなんだっけ?」みたいな都心部暮らしの人との生活の違いが出ちゃうんですよね。
いや、そういう場合は田舎を舞台にしちゃえばいいのかもしれないけど、読み手が限定されちゃう気がして……。
それ、一番うれしい言葉ですわっ(感涙)<次回も〜

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤 由愛
2007/11/04 20:23
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