プラスマイナス1

アクセスカウンタ

zoom RSS 美術を志す者

<<   作成日時 : 2007/10/25 21:31   >>

トラックバック 0 / コメント 2

「オレ、美術大学に進学したいと思ってます」

放課後の進路指導室。
二者面談の席で、担任と向かい合ったオレは、キッパリと言った。
担任は、思ったことがすぐ顔に出る、わかりやすいヤツだ。
オレの言葉に、嬉しそうに笑った。

「そうか。いやあ、進路がハッキリして良かったよ」

担任がこんな顔をするのも無理はない。
この前の進路希望調査で、オレは「まだわからない」なんて答えたからだ。
高校二年の三学期にもなって、進路が決まってないのはオレぐらいのものだったらしい。
担任は学年主任に、「指導がなってないからだ」とガミガミ言われたと聞いた。

「でも、どうしたんだ急に。美術に興味があるなんて知らなかったぞ」

ギク。
さすが担任、鋭い。

オレは、確かに美術に興味なんてなかった。
小学校時代の図工だって、一度も楽しいと思ったことがない。

でも今は違う。

どうしても美術を専門的に学ばなければならない理由ができたのだ。
理由が理由なので、あまり言いたくないが。

「こないだ、弟の付き添いで美術館に行ったんスよ。そしたら世界が広がったって言うか。自分でも何かを表現してみたい、って思ったんスよ」

本当の事を言いたくなくて、オレは無難な話をでっち上げた。

「うんうん。そうか」

担任は上機嫌でうなずいてる。
オレのでっち上げには気付いていないようだ。

「それで、どこの大学を受けるつもりなんだ?」
「まだ、具体的には……」
「それじゃ、早く志望大学を決めないとな。後でパンフを渡すから、ご両親とも話し合ってみなさい」

担任はちらっと壁の時計を見た。

「そろそろ時間だな。次の人に声をかけてくれ」
「はい。それじゃ失礼します」

オレは、進路指導室を出た。


オレが美術を学ぼうとしている理由。
それは、描いた物を本物に変えられるという能力をもらったせいだ。
描いた物を指先でトントンと二回叩くと、それが本物に変わるのだ。

この能力を手に入れたのは、今から一ヶ月ぐらい前のこと。
オレはその日、道端の水溜まりに落ちている汚い人形を拾いあげた。
誰かの落し物かもしれない、と思ったのだ。
すると人形は喋りだし、自分のことを妖精だと言った。
そして、助けてくれたお礼に、と、この能力を授けてくれた。

あまりに現実離れした話だったので、オレは夢でも見たんだと思っていた。
ためしにやってみて、この目で結果を見るまでは。

かくしてオレは、描いた物を本物に変えられるようになった。
食べ物を描いて指先でトントンと二回叩けば食べ物になったし、人間を描いた時も同じように、そいつを動かして喋らせることもできた。

だが、問題が一つ。

オレは絵がとんでもなく下手なのだ。

女をはべらしたいと思っても、小学生が描いた人物画みたいな女しか描けないし、腹が減ったからとラーメンを描いても、味は確かにラーメンだがまるで出来損ないのねんど細工のような見た目の物が出来上がる。

そんなこんなで、見た目というものの重要性を、オレは痛いほど学んだ。
だからこそ美術大学への進学を希望したのである。

ああ、絵じゃなくて写真を本物に変えられる能力だったら良かったのに……。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
わあ、これスラスラっと読めますね。
きっとものすごく流れがいいんだわ。
だって苦労して捻くりだした文章は読みづらいもの。
ルフィ(ONE PIECE)はゴムゴムの実を食べて能力を手にいれたけれど、この子は人形に宿った妖精からもらったんですね。
ああ、筆力アップに妖精が現れてくれないものかしら。
つる
2007/10/27 23:46
感想ありがとうございます。
今回はケータイ使って書きました。

それ、わかります。読んでてちっとも頭に入ってこないんですよね。自分の過去作品にもそういうのがあるんですけど。<苦労して〜

ワンピース、こっちは午後三時という社会人には厳しい時間に放送してます。
前は夜七時にやってたんで、その頃は見てたんですが、いいトシした大人が「うるっ」と来る場面もありましたねぇ。
キャラではチョッパーがお気に入りです。
今はどういう展開になっているのかさえわからない……。

筆力アップの妖精は私も欲しいです。
むしろ代わりに書いて欲しいぐらいで(駄目だって)

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤 由愛
2007/10/28 21:56
美術を志す者 プラスマイナス1/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる