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<<   作成日時 : 2007/08/30 22:09   >>

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わたしが最初に「それ」をやったのは、たぶん幼稚園の時。
なんとなく、うっすらと記憶にあるの。

大嫌いなピーマンが晩ご飯に出て、ママに叱られてしぶしぶ口に入れたのだけど、どうしてもどうしても飲みこむことができなくて。
でも飲みこまないで口に入れたままにしておくと、ピーマンの苦味がどんどん広がってきて、気持ちが悪くなって。
飲みこんだフリをしてママから逃げたわたしは、ピン、とひらめいた。

「花壇に穴を開けて、大嫌いなピーマンを埋めちゃえ」って。

ママに見つからないようにコソコソと庭に出て、わたしはそれを実行した。
指先で、ちょいちょい、と穴を開けて、ピーマンを吐き出して、土をかぶせて、オシマイ。
ママは、わたしがそんなことをしたなんて、ちっとも気付かなかった。

それからも、わたしは嫌いな食べ物が出るたびに、こっそりと花壇に埋めた。
何も知らないママは、「好き嫌いがなくなって、良かったわねぇ」なんてのんきに笑っていた。

大きくなると、嫌いなものがいろいろと増えた。
食べ物だけじゃなく、限られたおこづかいで買ったのにちっとも面白くなかった本とか、プレゼントされたけどちっとも似合わないアクセサリーとか。
わたし、片っ端から埋めてやったわ。

誰かにあげればいいじゃないとか、売ればいいのにとか、そういう問題じゃないの。
わたしが一旦不愉快に思ったものが、世の中にあるって思うだけで頭に来るの。
だから、わたしは埋めるの。
その存在を、この世から抹消してやるために。

ママが掘り返して気付くんじゃないのか、って?
その心配はなかったわ。
ママは飽きっぽくて、花壇を作ってみたはいいけど、一度も花を植えなかったの。
要するに使われていなかったの。

わたしにとって、その花壇は「嫌いなものを埋める場所」。


だから。

だから――……。


だから今、わたしはここにいる。
ぱんぱんにふくれた、黒いビニール袋をいくつかぶら下げて。

古い言い方だけど、出会った瞬間、胸がキュンとときめいた男の子。
いろいろ努力して自分を磨いて、勇気を出して告白して、やっと恋人になれた男の子。
ライバルがたくさんいて、わたしなんか選んでくれないんじゃないかって思っていたから、OKしてくれて、本当に嬉しかった。

だけど、付き合い出して初めてわかった。
彼の浮気癖。
おまけに、女の子がいくら「愛してる」って言っても、体が伴わなくちゃ信用もしない、バカ男だった。

わたしは、出会った時には大好きだった彼のことを、付き合いはじめて一ヶ月もしないうちに、大嫌いになった。
マイナス成長もいいところ。
頭にきていた。
自分自身のことも情けなかった。
あんなに努力して、自分を磨いて、勇気を出して告白した相手が、こんなやつだったなんて。
わたしは、こいつの一体どこを見ていたんだろう。
わたしの目、ふし穴にもほどがある。

消さなくちゃ。
わたしがこいつに恋をしていた事実。
あまりにも不愉快なこいつの存在。
全部全部リセットして、また新しくスタートするんだ。

今回は、いつもより深く、大きく穴を掘らなくちゃ。


わたしは、シャベルを思いきり深く突き刺した。
大嫌いなものを、埋めるべく。



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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
なんかよくわかりますよ。
大嫌いなものは即効で目の前から消えてくれ!と思っちゃいます。
自分にあてはめると特にいや〜人に出会った時、そう思っちゃいますね。
そういう時は、“さと子”に肩代わりさせます。
つる
2007/09/01 11:59
感想ありがとうございます。
私はたびたび「即効で目の前から消えてくれ」って思うことがありまして、今回は小説にその感情を利用してみたところです。
でも、キャラクターに肩代わりさせるというテもあるのですね。
参考になります。

よろしければ、またおいで下さいませ。
鈴藤由愛
2007/09/02 21:10
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