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zoom RSS 浄化される世界

<<   作成日時 : 2007/08/20 22:20   >>

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堕落して悪徳に染まった人間達。
他の生き物達を踏みにじってまで、つまらない欲望を満たす様は、どんな獣よりも醜くおぞましい。
その人間達のために大地は汚れ、疲れ果てた。

――その先に待つのは、破滅に違いなかった。

堕落しきった人間が滅ぶのは自業自得だが、その他の生き物達が巻き添えにされるのを、無視するわけにはいかない。
世界を浄化すべく、神は世界に洪水をもたらした。
瞬く間に世界は水の下に沈み、そして、一艘の巨大な船が現れた。
中には、全ての生き物が一つがいずつ乗せられている。

船は、洪水の水の流れに苛まれながらも、なんとか持ちこたえていた。

「いつになったら、洪水はおさまるのだろう」

生き物達と寄り添いながら、彼は呟いた。

――この世界において最も正しい人、と認められた者。
彼はあらかじめ神に、大洪水が来ること、それに備えて箱船を作るよう教えられていた。
彼は、船を作るかたわら、人間達に「大洪水が来る」と何度も伝えたが、耳を傾ける人間はついに現れなかった。
あまつさえ、彼を笑う人間さえもいた。
結果、彼は誰一人として救うことが出来なかった。
彼にできたのは、全ての生き物を一つがいずつ、船に乗せることだけ。
この船に乗り込んでから、一体何日が過ぎたのか。
今、この船はどこをさまよっているのか。
悪天候のため、外に出て周りの景色を見ることさえかなわない。
彼は、他の生き物達と身を寄せあいながら、この、いつ終わるとも知れない漂流を続けるしかなかった。



「そろそろ、水を引いても良い頃合いではないでしょうか」

空高い位置で、その船を見下ろしながら、若者が呟いた。
ただの人間ではない。
背中に生えた翼を、ばさばさと動かしている。

「そうだな。では、船をあの山にでも漂着させよう」

答えるのは、口元に長い白ひげをたくわえた老人。
ゆったりとした衣服に身を包み、杖をついている。

「しかし、今回は思い切った事をなさいましたね。人間の代わりにロボットを乗せるなんて」

それを聞いた老人は、悲しげな表情を浮かべ、ため息をついた。

「人間を乗せてやったところで、何にもならないのがよくわかったからね。毎回、善人を選んで乗せているはずなのに、地上に降りてしばらくすると、すぐに堕落するのだよ? いい加減私だって失望するさ」

「まあ、ロボットは融通がきかなそうですが、人間みたいに堕落はしないでしょうからね。人間よりもずっと平和に地上を管理してくれますよ」

「そうだな。今回はおそらく大丈夫だろう」



――船は、高い山へと、少しずつ近付いていた。


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