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<<   作成日時 : 2007/07/30 23:11   >>

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朝、いつものように家を出ようとすると、玄関前で何かを踏んづけた。

足をどけてみると、ライターぐらいの大きさの黒い箱があった。
箱には、ボールペンで言う、ノックする部分みたいなものがついている。
裏返すと、説明書きらしいラベルが貼られていた。

『ストレスに苦しむ貴方へ
ストレスを感じたら、この箱のノック部分を押して、スッキリさせましょう。
使用上の注意:周囲2メートル以内に人がいない状況で使用してください』

ほー。
新しいストレス解消グッズか?
どっかのメーカーが無料で配布していった試作品だろうか。
あるいは、元々持っていた誰かが飽きて、俺の家の前に放り投げていったのかもしれない。

しばらく観察してみたが、そのうち、あることに気付いた。

どこにもメーカーの名前がないのだ。
簡単なロゴマークすら入っていない。
MEDE IN ナントカ っていう、どこの国の製品かも書いてない。

あ、あやしい。
これ押したら、変なガスとか出てこねえだろうな。
あるいは爆発したりして……。

捨てようかとも思ったが、家のゴミ箱に捨てるのはちょっと嫌だし、もしかしたら良い物かもしれないし……という気がしたので、とりあえず持っておくことにした。


……で。


俺はさっそく、強いストレスを受ける羽目になった。

運の悪いことに、明らかに不良とわかる四人組の若い奴らに絡まれてしまったのだ。

「おっさん、これ治療代な」

そう言って、ガラの悪そうなデカイ奴が、俺の内ポケットから財布を抜き取った。

ちくしょう、返せ。
そもそも治療代って、たかが足を軽く踏まれたぐらいで、ケガなんかするわけねーだろうが!
大人をナメんじゃねーぞ!

……そう思っても、口には出せない俺である。
万が一言えたとしても、そうなったら今度は拳や蹴りが飛んできそうだ。
それは怖い。
やっぱり、痛い目には遭いたくない。

俺の内ポケットから財布を抜き取った奴は、紙幣だけを取ると、ぽいっとゴミのように財布を放って返してきた。

こ、このやろうっ。
人の財布を、ゴミみたいに扱いやがって!

怒りで手を振るわせていると、持っていたあの黒い箱が、ポロッと落ちた。

「何だぁ? これ」

さっそく一人が拾い上げる。

「携帯ゲームじゃね?」
「いい大人のくせして、ゲームなんかしてんのかよ」
「おっさん、これ、くれるよなぁ? 大人ならまた買えるんだろ?」

ニタニタ笑いつつにじり寄られると、さっきまでの怒りが消えうせ、代わりにまた恐怖心が戻って来た。

あげる、あげるからさっさとどっか行ってくれ。

俺がガクガクと頷くと、四人組はバカにした顔で笑いながら、去っていった。
俺は、その後姿を見つつ、ほっと息をつく。

はぁ、なんとか無事で済んだな。
……いや、無事じゃねえな。
金取られちまった。
しかも、給料日前でツライ時期に……。

後で、警察に行かないとな。
ああ、情けねぇな、俺……。

がっくりと肩を落としたついでに、俺はもう一度四人組を見た。
歩きながら、ゲラゲラ笑っていやがる。
そのうちの一人が、あの箱を持っていた。
そして彼は、何気ないふうで、カチ、とノック部分を押した。

その途端だった。

ぶしゃああ、と殺虫剤よろしく、白い霧のようなものが箱から溢れてきて、四人組をすっぽりと包み込んだのだ。

ど、毒ガスか?

そう思って見ていると、そのうち四人がバタバタ倒れていった。

きゅ、救急車呼ばないと……駄目、だよな。
たとえ、俺から金を恐喝した奴らでも、見捨てるのはマズイ。
慌ててケータイを取り出した、その時だ。

「……あれ?」

むくり、と一人が起きあがったのだ。
ぼーっとしてはいるが、苦しんだりもがいたりしている様子はない。

なんだ、毒ガスじゃねえのか?

俺は、ケータイをしまいこんだ。

「ここ、どこ……?」
「君、誰?」
「今まで一体、何をしてたんだ?」
「どうしよう、何も思い出せない」

四人が四人、なんだかめちゃくちゃな事を言い出した。
どうも、記憶がちょっとなくなっているようだ。

俺は、不意に、箱のラベルに書いてあった文を思い出した。
確か『ノック部分を押して、スッキリさせましょう」みたいなことが書いてあった気がする。

スッキリって……スッキリって、こういうことだったのか!
大事なところまで、スッキさっぱり忘れちまってるじゃねぇか!

俺は、どんどん混乱の大きくなるさまを見つつ、押さなくて良かったと心底思った。

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