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zoom RSS あなたが笑うその日まで

<<   作成日時 : 2007/05/23 22:43   >>

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俺は、クラスで「面白いヤツ」と言われている。

毎日、お笑い芸人のごとくネタ作りに精を出し、自己流ながらものまねの研究をし、笑いのセンスを磨いている。
そのおかげで友人は多い。
時々、「将来、お笑い芸人になりたいの?」なんて聞かれることもある。
それも悪くないかな、なんて思う。

だが、俺が努力を重ねるのには、理由がある。

――クラスにいる、一人の女子。
ミユキっていう名前で、おとなしくて静かだけれど、暗いって感じはしない。
仲のいい奴が何人かいるから、変に困った性格というわけでもないんだろう。

そんな彼女は、俺のギャグを聞いて、他の女子が大口開けて爆笑してる中で、いつも、口元を手で隠すようにして、かすかに笑っている。
それが、俺には気になって気になって仕方がないのだ。
いかにもおしとやか、って感じなんだが……どこか、寂しげな影のようなものを、俺は感じてしまうのだ。

どうして、他の女子みたいに大口を開けて爆笑したりしないんだろうか。
最初は、そんな疑問を感じただけだった。

だが、近頃の俺は、何か理由があってはっきりと笑えないのだろうかと、そう考えるようになっていた。
俺の言うギャグがつまらない……というのは理由としてはちょっと変だろう。
だったら、最初から眉一つ動かしもしないはずだ。
現に、彼女はつまらない時はかすかな笑みさえ浮かべないのだから。

と、すると……何か、悲しいことがあって、それが胸につかえていて、どんなに笑いたくても、他の連中みたいに能天気に口を開けて笑えないんじゃないだろうか。

一体、何だろう。

家庭に、何か問題があるんだろうか?

今でも癒えない、心の傷があるんだろうか?

……直接聞いたわけじゃないし、誰かに聞くのも悪い気がして、俺はまだ事情を知らずにいるけれど。


とにかく、俺は、彼女が大笑いしてくれるのを目標に、日々笑いのセンスを磨いているというわけだ。
笑うことで、彼女の胸のつかえが取れてくれたら……そう思わずにはいられない。

俺は、――いつか、彼女が心の奥底から笑える、そんな日が来るまで、努力を重ね続ける。
そして、願わくば、何の屈託もない笑顔を浮かべる彼女のそばにいられたら……。




――ある日の放課後。


「ねぇミユキ、あいつ、アンタのこと好きなんじゃない?」
「そう……かな」
「絶対そうだって! ねぇ、どうなの?アイツが告白してきたら、オッケーしちゃう?」
「……告白、されないと思う」
「ええっ、どうしてよ。あれ、絶対脈アリだよ?」
「だって……」

ミユキは、いつもとは違い、口を手で覆わずに笑ってみせた。
唇からのぞいた、ミユキの上の前歯。
すきっ歯で、歯並びもおそろしくガタガタで、そんな歯を見せての笑顔は、お世辞にも見られたものではない。
一瞬引きつり、それから、気遣わしげに笑顔を作って「大丈夫だって!」と言おうとした友人より先に、ミユキは言った。

「わたしが手で口を覆って笑ってるから、知らないだけ……これを見たら、告白する気、なくすと思う」

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