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zoom RSS 足元からの危機(二回目)

<<   作成日時 : 2007/05/18 23:07   >>

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俺は、イラついていた。
待ち合わせしている友人のサトルが、なかなか来やがらねぇからだ。

しかも、その待ち合わせ場所というのがひどい。

円形の噴水前、なのだ。

……噴水だぞ、噴水。

なんで野郎同士で、こんなとこで待ち合わせしなきゃいけねぇんだ!
こういう所で待ち合わせすんのは、やっぱりカワイイ女の子とデートする時だろうがよ!
……言っとくが、俺もサトルもそんなシュミではない。念の為。

しかし、実際、周りは見ただけでデートの待ち合わせだってわかるような奴ばっかりだ。
そわそわしてたり、なんだかぽやや〜んと空想してたり……ああ、見ているだけでぶん殴ってやりたくなる。

……お前ら、全員別れろ。こんちくしょう。

人の不幸を願っても虚しいだけなので、俺は、ケータイで「とっとと来い!」とメールを打ち、ついでにサイトを見て時間をつぶすことにした。

そのうちに、ふと、前のほうに気配を感じた。
サトルが来たんだろうか。
ったく、来たんなら来たと言えっての。

「お前なぁ、おせーよ。ってか、なんで待ち合わせ場所が……」

にらみをきかせつつ文句を言いかけて、俺は続きの言葉を飲みこんだ。
そこにいたのは、サトルではなく、知らないおじいさんだった。
白いひげを生やしていて、穏やかそうな顔つきで、知性と気品っていうものがにじみ出ている。

――直感した。

こいつは、関わっちゃマズイものだ。

こないだ、好奇心を出して道路に開いた穴をのぞいた時のことを思い出す。
あの時は、なんだか帝国だの兵の配置だの陛下だの、物騒な言葉がぼんぼん出てくる光景が見えた。
しかも、俺はその時、部下の一人らしい奴に片目をつつかれ、後日、ものもらいができて、不便で不愉快な思いをしたのだ。

俺は、生まれて初めての眼帯をした瞬間、心底誓った。
今後一切、妙なモンには関わるまいと。

「あ、すいません、知り合いと間違えました」

一言お詫びを申し上げてから、俺はそそくさとケータイの画面に目を移す。
もう、絶対、ここから目を離してたまるものか。
妙なことに巻き込まれてたまるものかっ!

「もし、あなた……私の話を聞いてはくださいませんか」

う……話しかけてきた。

「い、いえ、俺、知り合いと待ち合わせしてるんで、ここ離れられないんで、道案内とかはちょっとできないです、すいません」

ケータイの画面を凝視したまま、俺は1ミリたりとも顔を上げずに答えた。
お願いだ、俺を非日常に巻き込むのはやめてくれ。

「いいえ、道案内を頼みたいのではありません。ただ、私の話を聞いていただきたいのです」

……宗教の勧誘だったりして。

「あ、俺、宗教とかは特に信じてないんで」
「宗教の話ではありません」

きっぱりと告げる声。
そして、ほんの少し、空気を吸いこむ音。

「あなたに、私の意思を継いでいただきたいのです」

……何っ?

「いや、あの、意味わかんないです」

とにかく追い払わねば。
俺の直感がそう告げた。
そうしないと、とんでもないことに巻きこまれそうな気がする。
気がする、というより、巻きこまれるとしか思えない。

「いずれ、時が来れば、おのずと道は開かれましょう。あとは、あなたしだいなのです。私の意思を継ぐか、それとも、まったく無視して突き進むか」
「……俺の意見は関係ねえってのかよ」

思わずぼやいてしまった。
あんまり勝手なことばかりほざくから、つい腹が立ってしまったのだ。
うるせぇ、とか、そういう言葉じゃないのが、我ながら不思議だったが。

「あなたの意思を無視するようなことは、しないつもりです。ですから、取りあえずの選択肢は残してあります。私の意思を継ぐか、無視をするか。どちらも、あなたが自分で選べるのです」
「……………………」

俺の知ったことか、と言いたかったが、何故か、どうしても口から出てこなかった。

「私は、あなたを選びました。決定権は、あなたにあります」

知ったこっちゃねぇ! 妙なことばっかり色々ぬかすな!

そう言おうと、顔を上げた瞬間――気配が、ふっと消えた。
そして、見上げたその場所に、あのおじいさんはいなかった。

……何だったんだろうか、あのおじいさんは。
俺は寝ぼけていたんだろうか、それとも、熱射病か何かにでもなって、幻でも見たんだろうか。

少なくとも、あんなのが現実なんて、絶対に認めたくない。

俺は、なんとなく目をこすった。

……なんだか、妙に……片目が、かゆい。
こないだ、ものもらいになった方の目だ。
何度こすっても、おさまらない。
そのうえ、なんだか、チカチカするような……?

「おー、悪い悪い、待たせたな! って、どうした? 目、なんかしたのか?」

目をこすっていると、サトルの馬鹿がやっと到着した。
着くなりそんなことを聞くから、俺はよっぽどかゆそうに目をこすっているんだろう。
……実際、かゆい。

「バカヤロ、お前遅ぇよ!……目ぇ、かゆくってしょうがねえんだよ」
「えぇ? 大丈夫か? 目薬いるか?」
「よこせっ」
「おいおい、そんなにヒドイなら医者行った方が……」



――後日、俺のものもらいは再発した。


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