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zoom RSS バレンタイン・ラプソディ

<<   作成日時 : 2007/02/11 23:35   >>

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いつも、学校帰りに歩道橋ですれちがうあの人。
背はあまり高くないし、着てるものは地味なものばかりだけど、目元が優しい感じで……初めてすれちがった後、胸がドキドキして止まらなくて、一目惚れしたんだってことに、あたしは嫌でも気付いた。

すれちがうたびに、あたしは何度も声をかけようと思った。
でも、結局何もできないまま、一年が過ぎようとしている。

……このままじゃ、いつまでも苦しいままだ。

あたしは、今年のバレンタインに、手作りのチョコレートを渡して告白しようと決めた。

突然、知らない女の子からチョコを渡されたら、男の人ってどう思うんだろう?
気味が悪い、なんて思うかな?

そう思うと不安だけど……でもやっぱり、このままでいるなんてできない。


バレンタイン当日、あたしはいつもより早い時間に歩道橋に向かった。
バッグには、あの人に渡すために早起きして作ったトリュフ。
小さな箱に入れて、パステルカラーの包装紙で包んで、十字に白いリボンをかけてある。
お店で、あれこれ悩みながら、時間をかけて選んだやつだ。
生まれて初めてのラッピングは難しくて、何枚か駄目にしちゃった末に、やっときれいにできあがった。

歩道橋にさしかかったところで、あたしはバッグからチョコの入った箱を取り出した。
あの人は……と、足を止めてキョロキョロした時。

「きゃ」

どし、と何かがぶつかってきた。
その勢いでずっこけて、あたしはチョコの入った箱を落としてしまった。
慌てて拾おうとして、あたしは固まった。

乾いたアスファルトの上に同じラッピングの箱が二つ、転がってる。
こ、これは一体……!?

「あいたた……」

すぐ近くで、知らない女の子が起き上がった。
見た感じ、あたしと同い年に見える。
もしかして、さっきぶつかってきのは、この女の子だろうか。

「ごめんなさい、ぶつかっちゃって……ケガしてない?」

女の子が、あたふたしながらあたしを気づかう。

「あ、大丈夫。気にしないで。私もぼーっとしてたし……」

あたしが答えると、女の子はホッとしたように笑った。
それから、キョロキョロ辺りを見回して……アスファルトに転がる、二つの箱を見つけると、「あ」と力なく呟いて固まった。

「もしかして……あなたもチョコ、持ってた?」
「う、うん……」

あたしは、女の子を見つめた。
女の子も、あたしを見つめた。
お互い、救いを求めるような表情で。

「自分のがどっちか……なんて、わかんない……よね?」

おそるおそる声を出してみると、女の子は困り果てた顔をした。

「ごめんなさい、わかんない……」
「……目印なんて、つけたりしない、よね……」
「つけない……」

あたし達は、それっきり黙ってしまった。

「そうだ。あなたのは、どんなチョコなの? 振ったらわかるかもしれない」
「トリュフ……6個入ってる……」
「……あ……あたしと同じだわ……」

あたしは思わず頭を抱えた。
な、何か、何か違うところはないのかー!?

ええい、理屈でわかんないなら、直感勝負よ!

「じゃあ、直感で、どっちが自分のだと思うか、指さしてみよ! せーのっ」

ピッ、と指差したのは同じ箱。
はあああ……と、二人そろってため息をついた。

「ねぇ」

女の子が、あたしを真剣な顔つきで見る。

「どっちがどっちのチョコかわからないなら……もう、どっちでも良いんじゃない?」
「え……えぇっ?」
「そりゃ、自分の作ったチョコを渡したいわよ? でも、本気でどっちがどっちのチョコか、わからないんだもの。仕方ないじゃない」
「うーん……でも……」
「だって、このまま悩んでたら、チョコ渡せないじゃない」
「う……」

それは、困る。
あたし達がぐずぐずしてる間にも時間は流れているのだ。
悩んでる間にあの人が来てしまったら、元も子もない。

「そうしよっか……」

あたしはその提案をのむことにした。

「ごめんなさい、私がぶつかっちゃったばっかりに……」
「ううん、あたしだってボーッとしてたし……」

なんとなく気まずい中、女の子はちょっと迷いながら、箱の一つを取った。
あたしは、残った箱を手にした。
……これが、あたしの作ったほうなら良いんだけど、もし、女の子が作ったほうだったら、なんだか、他人のチョコを横取りしたみたいで、ヤだなあ。
ちらっと女の子を見ると、同じことを考えてるみたいで、なんだか悩んでいるような顔をしていた。

「あ……ここにいていいの? チョコ、渡しに行かないの?」

不意に、女の子があたしに聞いてきた。

「あたしの好きな人、いつもここですれちがう人だから……ここで待ちぶせするの」

恥ずかしいけど、隠してもしょうがない。
あたしは、正直に打ち明けた。
それを聞いた彼女は、目を丸くした。

「やだ。そんなとこまで一緒なの。私も、よくここで見掛ける人に渡すのよ。だから私も待ち伏せなの」
「へぇ、偶然」
「あ、来た!」

彼女が、明るい声をあげた。

「えぇっ、どこどこ?」
「あの人よ、ほら。今、階段上がってくるところ」

彼女が嬉しそうに指差した人を見て、あたしは声も出なかった。


……ウソでしょ……。
作ったチョコやラッピングだけじゃなくて、渡す相手まで同じだなんて……。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
きっと過去か未来の自分だったんだ!<ぶつかった相手
S
2007/02/17 01:57
感想ありがとうございます。
……それは、考え付かなかった!<過去か未来の自分
鈴藤 由愛
2007/02/18 22:09
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