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zoom RSS おてんとう様はお見通し

<<   作成日時 : 2007/01/23 23:04   >>

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俺は、大あくびを繰り返しながら、ホームで電車を待っていた。
ああ……眠い。
差しこむ陽射しが目に痛い。
今日はバカ陽気で、やたら陽射しが強いのだ。

――体がだるい。
昨日、やっぱり早く寝ておけば良かった。

そんなことをボーッと考えていると、

「あれ?」

今目の前を通って行った男に意識が向いた。

割と大柄な男で、地味な衣服に似合わぬぐらい日焼けしている。
色黒なことで有名な歌手がいるが、あれと同格か、それ以上だ。
俺は、しばらくぼんやりと見ていたが……不意に、その顔に見覚えがあることに気付いた。

「ウエタ!」

その男が誰なのか気付いた時、俺の口からは懐かしい呼び名が飛び出していた。
上本タカシ。略してウエタ。
中学校生活を一緒に過ごした同級生である。

俺の声に、ウエタはビクッと体を震わせた後、周りを気にしながらこっちを見た。
あぁ、コイツは中学時代もこんな感じだった。
体つきのわりに、案外小心者なのだ。

「いやぁ、変わらないな〜。やたら日焼けしてるけど、海外にでも行ったのか?」

懐かしさで妙に嬉しくなりながら近寄ると、ウエタはボソッと「あぁ」と返事をした。

「マジかよ〜。良いなあ、どこ行ったんだ?ハワイか?」
「まあ、そんなとこ……」
「ふーん。誰と行ったんだ?彼女かぁ?」

ちょっと意地悪な質問をすると、ウエタは物凄くうろたえた。

「あ……あの、えぇと……」

変わらんなー、こういう話に弱いトコ。

「あ……オレ、急いでるんだ、じゃあなっ」
「あ、おい」

ウエタは止める間もなく、さっさと電車に乗り込んでしまった。
その電車は数秒で発車してしまい……俺は一人、ホームに残されてしまった。
……気を悪くしたんだろうか。
俺は、ちょっと悪いことをしたなと思いながら、ホームに滑り込んできた電車に乗った。

昼になり、ラーメン屋に入った俺は、注文したものが出来上がるまで、テレビを見て時間を潰していた。
テレビが映していたのは、昼間にやっているニュース番組だった。
ボーッと見ていると、どこかで見たような景色が映った。
これって……ああ、ウエタの家の近くだ。
ブロック塀に囲まれた、ウエタの家が見える。

ただし、黄色いテープの向こう側に。

黄色いテープのこちら側では、若い男性アナウンサーが、マイクを片手に緊張した顔をして立っていた。

『はい、現場付近からお伝えします。今朝、あちらに見える住宅で、夫婦の遺体が発見されました。死亡したのはこの家に住む公務員、上本タカオさんとその妻マリコさんです。遺体を解剖した結果、死亡したのは昨夜であることがわかりました。また、この家の長男タカシさんの行方がわからなくなっており、警察では何らかの事情を知っているものとみて、行方を追っています……』



――後日、ウエタは殺人事件の容疑者として逮捕された。

高校を卒業してから、進学も就職もせず、毎日フラフラしていたらしい。
そんな生活を両親にとがめられ、カッとなって凶行に及んだのだそうだ。

ただ、一つだけ謎が残っているらしい。

近所の人の話によると、事件前日に見たウエタは確かに色白だったという。
と言うことは、ウエタはたった一日で別人みたいに日焼けしていたことになる。
だが、日焼けサロンには行っていないというのだ。

このことは、事件最大の謎として、ワイドショーが連日取り上げていた。


俺は、あの時以来曇っている空を見上げた。
ウエタがあんなに日焼けしていたのは……もしかして『おてんとう様は見ているぞ』ってことだろうか?

……いや、まさかな。
そんな非科学的なこと、あるわけないか。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ショッキングで面白い。
謎がまた一つ。
葉月瞬
2007/01/24 22:17
感想ありがとうございます。
「つまらん」とか「わけわからん」とか言われなくて良かったです。
書きながら「これ、読んで意味通じるかな〜」って悩んでいたので。
またいらしてくださいませ。
鈴藤 由愛
2007/01/24 22:58
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