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zoom RSS シラ様

<<   作成日時 : 2007/01/28 22:06   >>

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最近、職場の同僚の羽振りが物凄く良い。
既に奥さんと二人の子供がいるというから、ローンを支払う金や教育費のために、少しでも節約した方がいいだろうに。

俺は、彼のおごりで飲んでいる席で、そのことを尋ねてみた。
同僚は、酔っていることもあってか、笑いながら教えてくれた。

「半年ぐらい前から、オレの家に、シラ様が憑(つ)いたんだよ」
「シラ様って何だ?」
「なんだか、白いイタチの姿なんだが……ばあさんの話だと、それが家に憑くと、家は急に豊かになるんだと……事実、親父の経営してる喫茶店は急に儲かるようになったし、宝くじも高額当選したし……」

……うらやましい。
それなら、働かなくたって食っていけそうだ。

「良いなあ、俺のところには貧乏神ぐらいしか来ないぜ」
「まあ、日頃の行いの違いってやつだろうさ」

そう言って笑う同僚が、ちと憎たらしかった。


「マズイことになった」

同僚が重々しくそう言ったのは、三ヶ月後のことだった。

「なんだよ。例のシラ様のお陰で何もかも順調だろ?」

俺の言葉に、同僚はすっかり生気をなくした目を向けてきた。

「世の中、そうそう美味しい話なんか、転がってないんだよ……やっぱり」

同僚はため息をつくと、頭を抱えた。

「どういうことだよ」
「ばあさんも知らなかったみたいなんだがな……シラ様ってのは、どんどん増えていくんだよ」
「でも、増えるぐらいなら、そんなに困るもんでもないだろ」

少なくともゴキブリよりはマシじゃないだろうか。
しかし、同僚は心底苦しそうに顔をしかめた。

「ああ、十匹ぐらいまでなら、なんとかなったよ。だけど……何千……いや、今は何万に達してるかもしれない」
「……そりゃ、凄まじいな……でも、増えるだけならそんなに害はないんじゃないか?」

同僚は力なく、首を横に振った。

「シラ様に幸せを運んでもらうためには、毎日、宝石を一つやらなきゃいけないんだ。一匹に一つだぞ? 最初は楽なもんだと思ってたけど、今は何万匹もいるんだ。いくら安いやつにしたって、とてもじゃないけど稼ぎが追い付かない。しかも、その額は毎月増えていくんだ……」

「な……っ! 本当か、それっ」

俺は、耳を疑った。
宝石をエサにでもしてるのか、そのイタチ。

「本当じゃなけりゃ、オレもどんなに幸せか……」
「そんなイタチ、早いトコ追い出しちまえよ」
「あいつらが自分から出ていかない限り、どうにもならないんだよ……」

俺の言葉に、同僚は弱々しくうなだれた。


それから間もなく、同僚の家は立て続けで不幸に見舞われた。
おばあさんが亡くなり、奥さんの浮気が発覚したことをきっかけに離婚した上、子供の親権は母方に渡り、親父さんの喫茶店が潰れて多額の借金が残り、お袋さんがひどい詐欺にあい……まさしく不幸を絵に描いたようなものだ。

アイツは会社を何日も無断欠勤してしまい、ついにクビになった。
荷物をまとめている時の、やつれた土気色の顔が忘れられない。

俺は、アイツに本気で同情していた。

ついさっき……今の今までは。

俺は、部屋の片隅に目をやる。

――さて、どうしたものか。

そこでは、雪のような白い毛並みのイタチがちょこんと座って、俺のことををじっと見ていた。

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