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zoom RSS 現代○○事情

<<   作成日時 : 2006/12/07 23:41   >>

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不動産屋の前で、昔の友人に会った。
就職のために都心部に出た私とは違って、田畑の広がる田舎で実家暮らしをしていたはずなのに、どうしてこっちにいるんだろうか。

「ねえ、もしかして……」
「ああ、久しぶりねぇ。元気してた?」

声をかけると、彼女はのんびりとした笑顔を見せた。
彼女のお気にいりらしい、夏物のワンピースを着ている。

だけど、今は12月。
さすがにそれだけじゃ寒すぎる季節だ。

「その辺でちょっと話そうよ」

立ち話も何なので、私は、彼女を近くのカフェに誘った。

私はホットのストレートティーを、彼女はアイスのレモンティーとバニラアイスを注文した。
彼女の性格とか行動とかを知ってる私は、季節を無視した服装にも注文にも別に驚かないけど……周りのお客さん達は、彼女を珍しそうにじろじろと見ていた。

「一体どうしたのよ。こっちに引っ越してくる予定でもあるの?」
「ううん……今は、できればそうしたいな、って思ってるところ」
「そっか。もし引っ越すことになったら、連絡ちょうだいね。何か手伝えること、あるかもしれないし」
「……ありがと」

会話が、そこで途切れた。
彼女は不自然に黙りこんで、グラスの氷をストローでかき混ぜてる。

「最近ね、困った人が増えてるのよ」

ふと、彼女は表情をくもらせた。

「何? ストーカーとか?」

彼女は黒くてきれいな長い髪と、色白な肌の持ち主だ。
なんというか、大和撫子、という文字がそのまま当てはまる感じの見た目なのだ。
それで一方的に勘違いしたやつが、つけ回してるのかもしれない。
そう私は思った。

「ちがうわよ……」

彼女は、そっと周りの様子をうかがうと、身を乗り出して私に耳打ちをした。

「自殺、させて欲しいって言うの」

「え!?」

「自殺よ、じ・さ・つ」


そっと椅子に座りなおすと、彼女は暗い視線をテーブルに落とした。


「どこで聞いたんだか知らないけど、凍死だと眠るように楽に死ねるから、なんて言って頼みに来るの。あたしは絶対協力しないことにしてるけど……ほら、人間社会に紛れこんで生きていこうとすると、何かとお金が必要でしょ? 目の前で必死な顔して、お金を積まれて頼まれると、断りきれなくてやっちゃう人、いるんだよね。そういうのが増えて……なんだか、いろいろイヤになっちゃって。あたし、知らない人だらけの場所に行きたいな……」


私は、その話を聞いて、ため息をついた。
確かに、最近自殺者が増えているって聞くけど……。


「雪女も苦労する世の中なのね……」

「まあね。あたし達妖怪が気楽に生きていられた時代は、もう終わってるのかもね」

私の呟きに、彼女はどこか寂しそうに笑った。

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